研究課題
ヒトを含むほぼ全ての多細胞生物は酸素を失えば生命を維持できないが、その一方で生体内の酸素は一定ではない。ヒト体内の酸素分圧は末梢に向かって低下し、さらに生理的環境や疾患によっても生体内の酸素濃度は大きく変動する。この点に着目し、研究代表者はさまざまな低酸素環境を設定して嫌気性菌・微好気性菌による感染実験を実施したところ、従来報告されていた知見と異なる実に多彩な宿主応答を呈することを見出した。そこで本研究では嫌気性および微好気性菌の感染に焦点を絞り、新たに見出された低酸素環境における細菌感染と宿主の応答機構を解明する。本年度、各種嫌気性細菌と微好気性細菌を免疫細胞等に感染させ、炎症応答をはじめとする宿主応答を解析した。その結果、低酸素環境下で宿主炎症が増強される場合と逆に抑制される現象が各菌種の感染後にみられることがわかった。この原因として、菌の感染初期に伴う菌の細胞への付着能、細胞が菌を貪食する機能:ファゴサイトーシスが酸素濃度に影響を受けることがわかってきた。また一部の応答機構に低酸素応答分子群が関与することが各種阻害剤の添加、免疫細胞特異的遺伝子欠損マウスの解析により明らかになった。また、細胞障害性毒素を産生する嫌気性菌の感染において、低酸素環境では毒素の作用とは別の細胞死が誘導されることも見出された。現在、それぞれの細菌の感染における菌側因子、宿主側因子の同定と機能の解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
酸素濃度によって宿主応答が異なることが明らかになった細菌の菌側因子の絞り込みが進み、宿主応答に関与する宿主因子の同定を進めている。ほぼ予定通りに進行していることから「おおむね順調に進展している」と判断した。
in vitro解析における実験系は確立しており、それぞれの感染実験系に適用しているが、in vivoの実験系を構築していく必要性がある。今後、関連遺伝子の欠損マウスの作製や薬剤投与の実験系を確立していく予定である。
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Microbiology spectrum_
巻: 10 ページ: e0332022
10.1128/spectrum.03320-22
http://www.tmd.ac.jp/dept/dentistry/bac/index.html
https://www.tmd.ac.jp/international/globalization/tmdu_international_collaboration_centers/ghana/ghana.html