研究課題/領域番号 |
22H02868
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 一路 京都大学, 医学研究科, 教授 (70294113)
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研究分担者 |
野澤 孝志 京都大学, 医学研究科, 准教授 (10598858)
村瀬 一典 京都大学, 医学研究科, 助教 (40710869)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ゼノファジー / A群レンサ球菌 / ユビキチン / 認識 / GBP1 / ガレクチン3 / TBK1 |
研究実績の概要 |
自然免疫における新領域として注目されているゼノファジー(病原体に対するオートファジー)は、ユビキチン依存的な選択的分解システムである。細胞内に侵入した細菌に対してK48/K63結合型の典型的なユビキチン鎖が病原体を標識することで、選択的に病原体を標的とする。一方で、A群レンサ球菌の流行株などの高病原性細菌はこうした認識から回避し、細胞内で増殖するが、そのメカニズムはほとんど明らかになっていない。そこで本研究では、表層糖鎖認識を介した細菌のユビキチン化をモデルとして、小分子可視化プローブや高解像度顕微鏡を駆使することで、感染時におけるユビキチンリガーゼや鎖特異的ユビキチン鎖の細胞内挙動を解析し、ゼノファジーによる細菌認識メカニズムを明らかにする。本年度は、このユビキチン依存的な分解のキーとなるguanylate-binding protein (GBP)の機能について解析をおこなった。この中で、特にGBP1が、TBK1のリン酸化を促進することにより、侵入したA群レンサ球菌(GAS)に対するゼノファジーを誘導することを明らかにした。GBP1は、細胞内に侵入した細菌が引き起こす膜損傷に対してGASを取り囲むような局在を示し、膜損傷センサーであるガレクチン3がそのリクルートを媒介する。GBP1をノックアウトすると、TBK1の活性化が抑制され、p62のリクルートが減少し、ゼノファジーによる殺菌活性が低下することが明らかになった。以上のことから、ガレクチン3-GBP1-TBK1がオートファジーのアダプタータンパク質p62を介したゼノファジーを制御していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細菌感染におけるゼノファジー誘導は、これまで様々な菌種で報告されているが、細胞内における細菌種の認識能についてはほとんど研究が進展していない。本研究では、その細菌種の違いを明らかとするために、その認識能への影響について解析を行った。細菌感染時には、インターフェロン(IFN)が一連の「インターフェロン刺激遺伝子」の発現を活性化し、免疫応答経路を活性化する。これらの遺伝子にはグアニル酸結合タンパク質(GBP)ファミリーのメンバーが含まれ、マウスには11、ヒトには7のホモログがあり、これらの両種において抗病原性作用を発揮することが報告されている。例えば、マウスGBP7はNADPHオキシダーゼ成分と相互作用し、Listeria monocytogenesやMycobacterium bovis BCGの分解を促進する。一方、ヒトGBP1はグラム陰性菌の細胞壁成分であるリポポリサッカライド(LPS)と結合し、インフラマソーム形成に必要なCaspase-4の活性化をサポートする。また、ヒトGBP1、2、3、4がShigella flexneriの運動性を阻害する一方で、細菌がユビキチン-プロテアソームシステムを介してGBPを分解することを意図していることが報告されている。本研究では、ヒトGBP1がA群レンサ球菌の分解に関わっていること明らかとすることができた。これは、ゼノファジーの活性化には、単に菌の認識だけでなく、IFN経路も関わっていることを示す知見である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでのユビキチン化研究の多くは、細胞を破砕してまとめて解析する生化学的な解析や、GFPに代表される蛍光タンパク質を目的の生体分子に遺伝子的に融合し細胞内で発現させることで細胞内局在や動態を解析していたが、元々細胞が持つ「内在性」のタンパク質の本来の感染時の挙動を見落としている可能性、また分子量の大きなタグを付与することで、本来とは異なる挙動や局在を示す可能性が示唆されている。特に、本研究では、GFPタグ等の蛍光タンパク質そのものがユビキチン化される可能性が否定できない。そこで本研究では、京都大学工学部浜地研究室の協力を得て、小分子プローブを用いた内在性タンパク質の標識により内在性ユビキチン化関連タンパク質のイメージングを行う。
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