研究課題/領域番号 |
22H02870
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 哲也 九州大学, 医学研究院, 教授 (10173014)
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研究分担者 |
後藤 恭宏 九州大学, 医学研究院, 助教 (20558358)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 細菌 / ゲノム / 宿主内多様性 / 菌血症 |
研究実績の概要 |
同一宿主体内でも細菌ゲノムの多様化が生じるが、この変化は宿主内環境への適応という点で重要である。その解析には、単一あるいはごく少数の菌種だけが存在する血液培養(血培)検体が都合の良い材料であるが、多数のコロニーを解析するには膨大な時間とコストが必要である。この問題を解決するため、申請者は血培検体から細菌DNAを効率的に濃縮し、ディープシーケンシングによって宿主内多様性を捉える手法を開発してきた。本研究では、これを用いて、1)血培陽性検体中に存在する細菌ゲノム多様性の解明(宿主内でのゲノム変化)、2)変異の種類や頻度に基づいた宿主内多様化を駆動する選択メカニズムの推定、3)菌種や感染様式の違いによる多様性や選択メカニズムの違いの解明を目指している。本年度の研究結果は以下の通りである。 1.九州大学病院検査部の西田留梨子医師の協力を得て、新たに607検体を収集した。 2.以前に収集した42検体を用いて解析パイプラインの有効性を検証した。その結果に基づいて修正を行い、以下の過程からなる最終的なパイプラインを構築した。(1)低速遠心による宿主細胞の除去やMolzyme社の MolYsis Plus kit などを組み合わせた細菌DNAの選択的濃縮、 (2)イルミナNovaSeqを用いたディープシーケンシング、 (3)ヒト由来リードの除去、(4)アセンブリとアセンブリ結果の評価、 (5) 得られたドラフト配列へのリードマッピング、 (6)マッピングエラー率が高いリードの除去、(7)2%以上の頻度で存在するヘテロ配列(SNPまたはInDel)の同定、(8)ヘテロ配列の種類とその存在比に基づいたハプロタイプの種類と存在比の推定。 3.本年度に収集したに収集した607検体の解析を開始し、上記の(1)から(4)までの作業を行なった。これにより、予備解析に用いた42検体と合わせて649検体の配列情報を取得できた。一部については、(5)以降の作業を始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.検体収集は順調に進み、新たに607検体を収集できた。 2.解析パイプラインの有効性の検証と修正についても、以前に収集した42検体を用い他検証を行うことができ、最終的なパイプラインを構築することができた。この修正により、マッピングエラー率が高いリード(繰り返し配列に由来する短いコンティグとコンティグ末端にマップされるリード、インサートサイズの大きなリード)の除去効率が向上し、さらに低頻度で存在するヘテロ配列(SNPまたはInDel)の同定も可能となった。 3.本年度に収集したに収集した607検体の解析についても順調に進み、ゲノム配列情報の取得が終了でき、一部については配列取得以降の解析を始めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に有効性の検証結果を元に改良したパイプラインを用いて、引き続き、649検体の解析を進める。 1. まず、収集した649検体のうち、これまでの解析で追加データが必要と考えられる40検体から配列データを追加取得するとともに、クオリティーの高い配列情報が取得することが難しいと判断される検体を除外することにより、一連の解析に耐えうる最終的な検体セットを確定する。現時点では620検体から627検体になる見通しである。 2. パイプライン(6)のステップに修正を加え(リピート配列除去の作業を追加)、マッピングエラー率が高いリードの除去の効率をさらに向上させる。 3. 修正を加えたパイプラインの(5)から(8)の作業を行い、個々の検体について、2%以上の頻度で存在するヘテロな配列(SNPまたはInDel)を同定し、同定したヘテロな配列の種類とその存在比に基づいたハプロタイプの種類と存在比を推定する。
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