研究課題/領域番号 |
22H02881
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
小林 郷介 公益財団法人東京都医学総合研究所, 疾患制御研究分野, 主席研究員 (80644989)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | enterovirus / receptor / tropism / tyrosine kinase |
研究実績の概要 |
エンテロウイルス71 (EV71)による手足口病は中枢神経合併症により重症化することがあり、ウイルス受容体の理解が重症化メカニズムの解明に不可欠である。受容体は、ウイルス粒子の細胞表面への接着を担うアタッチメント受容体と、ゲノムRNAの放出を担う受容体(SCARB2)に大別される。しかし、これらの受容体は神経指向性を決定する因子ではない。本研究では、神経指向性の鍵となる因子を探索し、3つのアタッチメント受容体候補分子を同定し、これらが果たす役割を明らかにすることを目的としている。 2022年度までに、候補遺伝子の1つを過剰発現およびノックアウト細胞の解析を行い、EV71の増殖性に寄与することを明らかにした。2023年度は、この遺伝子がEV71の細胞への接着や取込に寄与しているか解析した。組換えタンパク質との結合実験、過剰発現細胞への吸着実験などから、この候補遺伝子産物はアタッチメント受容体ではないと結論づけた。 興味深いことに、候補遺伝子と同じ遺伝子ファミリーに属する別の複数の遺伝子を強制発現してもEV71の感染増強が認められた。また、これらは受容体型チロシンキナーゼであるため、キナーゼ活性を喪失する変異を加えたところ、感染増強が起こらなくなった。 以上の結果から、候補遺伝子産物のキナーゼ活性とその下流のカスケードがEV71感染に重要であることが示唆された。今後は、この下流のカスケードを探索して、感染に関わるメカニズムを明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初期待していたアタッチメント受容体ではなかったが、EV71の感染に重要な遺伝子であり、その機能解明に近付いている。
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今後の研究の推進方策 |
受容体型チロシンキナーゼ下流のシグナル経路として、自然免疫系を中心に解析を進める。 またRNA-seqも行い、ゲノムワイドな発現変動も解析していく。
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