研究課題/領域番号 |
22H02887
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳井 秀元 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任准教授 (70431765)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | DAMPs / 炎症性疾患 / 腫瘍 / TCTP / 自然免疫受容体 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、「感染なき免疫応答」を担うダメージ関連分子パターン(Damage-associated molecular patterns; DAMPs)と呼ばれる自己分子について、特にTCTP(Translationally-controlled tumor protein)を中心としたこれまでの解析によって得られた知見に基づき、TCTPによる炎症促進作用を解明し、また、独自の視点からの解析により見出しつつある新規DAMP分子の同定と機能解析を進めることである。これにより自己分子が免疫系に認識されるようになる分子機構を解明し、DAMP分子群が炎症を誘導する生物学的役割について明らかにする。また、これらの分子群がどのように生体恒常性を破綻させ、疾患に繋がるのかについて解明する。一連の研究を通して、DAMP分子群を介した炎症・免疫反応および生体恒常性維持機構とその破綻がもたらす疾患の包括的理解を目指す。 当該年度の研究において、細胞外TCTPの役割を解析するための中和抗体の作成を進めた。候補となる抗体を複数得ることができている。また細胞外放出型TCTPを作成し、TCTPの機能解析を進めている。また、新たなDAMPsの探索も進めており、候補分子をいくつか得ている。今後候補分子の絞り込みを行う予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析から、細胞外に放出されたTCTPがTLR2シグナル伝達経路を活性化し、腫瘍の増殖を促進することを見出した(Nat. Immunol., 2021, 22: 947-57)。一方で、TCTP分子のどのような特徴が自然免疫受容体に認識されるのか、また、腫瘍以外の炎症性疾患病態におけるTCTPの役割については分かっていない。当該年度において、細胞外TCTPによる炎症促進作用を解析するために、中和抗体の作成を行い、いくつかの有望な抗体が得られた。これを用いて細胞外TCTPの機能について解析することができると考えている。また、細胞外TCTPを認識する自然免疫受容体についても詳細が明らかとなりつつある。これらのことからTCTPに関する当該年度の検討は順調に進んでいると考えられる。また、新たなDAMPについて、NF-kB転写因子を活性化するDAMP候補分子について精製を行い、質量解析からいくつか候補分子が得られている状況である。これらのことから、研究を進めるための準備が順調に進んでおり、当該研究は概ね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って検討を進める。TCTPについては中和活性の強い抗体を選択し、炎症や腫瘍モデルでの細胞外TCTPの役割について解析を進めていく予定である。また、TCTPノックアウトマウスでの検討も同時に進めていく予定である。TCTPによる自然免疫シグナル伝達の活性化機構について、TLR2と共役するTLR1、TLR6の役割についてさらに解明を進める。 新たな炎症誘導性DAMP分子について、候補分子の解析を進めて同定を目指す。候補分子のKO細胞の樹立、マウスの入手を進め、疾患における役割を解析するための基盤を構築する。
|