研究課題/領域番号 |
22H02907
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
高橋 暁子 公益財団法人がん研究会, がん研究所 細胞老化研究部, 部長 (60380052)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 細胞老化 / SASP / エピゲノム / がん微小環境 / CAFs |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年までに明らかにしていた老化間質細胞と一部の乳がん細胞に共通してみられる特徴的な染色体構造変化を指標に、がんの悪性化に関わる炎症性SASP(Senescence-associated secretory phenotype)遺伝子群の発現との関りの解析を行った。その結果、老化間質細胞と乳がん細胞に共通してゲノムのペリセントロメア領域のヘテロクロマチンレベルが低下しその領域が活性化していること、またゲノム上の炎症性遺伝子を制御する転写因子が結合する配列が開いたペリセントロメア領域と相互作用していることを見出した。乳がん患者検体のsingle cell ATACシークエンス解析とDNA-FISH解析の結果から、トリプルネガティブ型の乳がん細胞ではペリセントロメア領域が開く傾向にあり、ルミナル型の乳がん細胞ではその領域の開き度合いが年齢と正の相関があることが観察された。さらに、乳がん微小環境に存在するCAFsにおいては、ペリセントロメア領域の活性化と炎症性遺伝子群の活性化に正の相関があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、研究成果を論文として発表することができたので、当初の計画以上に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の成果から、一部の乳がん細胞と間質の老化細胞ではエピゲノムの異常が検出されることが明らかとなり、患者の年齢との相関が観察された。しかし、乳がんの発症や悪性化の過程でエピゲノム異常がおこる分子メカニズムの詳細は明らかにされていない。そこで、乳がん患者においてエピゲノム異常がおこる分子機構を明らかにするために、さまざまな細胞におけるストレス応答とエピゲノム異常の関連性と炎症性遺伝子群の発現などをメカニズムの解析を行うことを計画している。そして、エピゲノム異常を標的とすることで乳がんの再発や抗がん剤への耐性獲得を制御できる治療法開発の可能性を検討する。
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