研究実績の概要 |
1980年代より米国NIHを中心としてがん治療への応用が試みられてきたものの、明確な有効性を示せないでいたNK細胞であるが、近年その原因が、適切なphenotypeを作出することが出来ていなかったことに起因していることが明らかとなり、世界中で精力的に実用化開発が推進されている。 これに先行して申請者らは2010年より、悪性腫瘍に対する治療技術として獲得免疫機構を補完するべくNK細胞に着目し、研究開発を進めてきていた。特に固形腫瘍に有効性を示せるPhenotypeの作出を目指し、その手法を見出した(Saito S, Harada Y, et al, Hum Gene Ther Methods, 2013ほか特許4件、3つの固形腫瘍に対して治験実施中)。この細胞を申請者らは開発コードGAIA-102の名前で呼んでいる。 本研究により、網羅的な遺伝子発現解析およびメチレーション解析では、GAIA-102は末梢血中NKとMemory-like NKとを結んだ延長上に位置し、複数のsubtypeに分かれていることが判明した。また集団として再現性の高い状態変化を来たす培養系であり、リード数を抑えた予備実験においても明確にsubtypeを検出可能であることが確認された。 そこで培養開始時点から終了時点までの様々な段階でサンプリングを行い、scRNA-seq解析を実施した。これは、ある細胞集団が分化/状態変化していく様子を継時的に読み解くRNA velocity解析/Trajectory assayを行う意図であり、2018年に神経系および血球系の分化工程を系統的・視覚的に明らかにする手法として報告されて以来(Manno GL, et al. Nature 2018. 図2)、汎用が試みられている手法の応用である。その解析結果から徐々にGAIA-102の正体が明らかになってきた。
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