研究課題/領域番号 |
22H02928
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東洋大学 |
研究代表者 |
加藤 和則 東洋大学, 健康スポーツ科学部, 教授 (60233780)
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研究分担者 |
木村 寛之 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (50437240)
岩澤 卓弥 東洋大学, ライフイノベーション研究所, 研究助手 (70906297)
渡部 直史 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90648932)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | EphA2受容体 / ラジオセラノスティクス / 177-ルテシウム / 111-インジウム / 繊維肉腫 |
研究実績の概要 |
2023年度は[177]Lu-EphA2抗体の有効性の評価を行うために、[177]Lu-EphA2のEphA2との結合活性をフローサイトメトリーを用いて解析を行った。その結果、標識抗体のEphA2特異性及び腫瘍細胞への結合を確認できた。この結果は、NOTAリンカーを結合させたEphA2抗体および[111]In標識EphA2抗体の結合能と大きく変化しないことから、リンカーが最適であることが示唆された。ヒト繊維肉腫細胞株HT-1080をヌードマウスに移植し、皮下腫瘍径を確認後に、[177]Lu-EphA2抗体(10MBqまたは3MBq)、対照として10MBqの[177]LuCl3溶液、非標識のEphA2抗体を投与し、皮下腫瘍径を経時的に測定を行った。その結果、[177]Lu-EphA2投与群において対照群と比較して有為な腫瘍の増殖抑制効果が認められ、さらに10MBqの[177]Lu-EphA2投与マウスでは、腫瘍の消失が確認された。投与マウスにおいて明らかな体重減少は確認できないことから、[177]Lu-EphA2による重篤な副作用は認められなかった。現在、血清生化学値の解析を行い、副作用の詳細な検討を行っている。 このように[177]Lu-EphA2で明らかな抗腫瘍効果が確認できたことから、アスタチン[211]At標識EphA2抗体の作成を検討している。しかしながら[211]Atは製造に制限があることから、まだEphA2抗体への標識は2023年度に実施できなかったために、次年度に検討を行う予定である。 また繊維肉腫以外の腫瘍に対する効果を判定するために、EphA2の発現解析を行い、難治性の膵臓癌細胞にもEphA2が高発現していることを確認した。今後は腫瘍に対するEphA2標識抗体の特異性を確認するために、EphA2の発現を欠損させた腫瘍細胞株を作成し、解析に用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度もほぼ計画通りに研究を実施することができた。特に[177]Lu-EphA2抗体の担がんマウスに対する抗腫瘍効果を2度行い再現性も確認できたことから、現在論文投稿に向けて準備中である。ただし、アルファ核種への標識の研究が予定より遅延しており、2024年度には実施できるように計画を立てている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の2024年度は、α線核種であるEphA2抗体の211At標識を実施する。アスタチン(211At)は分担研究者が所属する大阪大学核物理研究センターで製造を行い、ボロン酸置換法を用いてEphA2抗体に標識を行う。 さらに担がんモデルでの集積と治療効果の確認を行うために、EphA2の高発現が報告されているヒト線維肉腫、軟部腫瘍、神経膠芽腫細胞をヌードマウスに移植し、担がんモデルを作成し、アスタチン標識EphA2抗体([211At] EphA2抗体)を尾静脈から投与し、SPECT装置を用いて、腫瘍および全身分布を確認する。治療効果については、腫瘍サイズを経時的に追跡し、control群との比較検討を行うとともに、画像上でVOIを設定し、腫瘍へのα線による吸収線量の算出を行う。同時に体内分布の詳細な評価のため、各時点で解剖群も設定し、組織重量と放射能カウントを測定し、%IDならびに%ID/gを算出する。また放射性化合物による毒性評価も行い、有効性と副作用の検討を行う予定である。
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