研究課題/領域番号 |
22H02944
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
疋田 貴俊 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (70421378)
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研究分担者 |
マクファーソン トム 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (40821898)
小澤 貴明 大阪大学, 蛋白質研究所, 助教 (90625352)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 神経回路 / 大脳基底核 / ドーパミン / 精神疾患 |
研究実績の概要 |
本研究では、戦略的な意思決定の神経機構と精神疾患病態を明らかにすることを目的としている。本年度は、マウスの戦略的な意思決定を評価する行動課題を確立し、大脳基底核のD1細胞およびD2細胞の神経活動を選択的かつ可逆的に抑制し、それらの操作が戦略依存的な意思決定に与える影響を調べた。次に、大脳基底核のD1細胞およびD2細胞が戦略的な意思決定に寄与する詳細な神経メカニズムを明らかにするために、意思決定課題中の神経活動イメージングを行った。 まず研究代表者が開発した大脳基底核神経回路に特異的な可逆的神経伝達阻止法を用いて、側坐核のD1細胞とD2細胞のそれぞれ特異的に破傷風菌毒素を発現させることで神経伝達遮断を行い、Attentional set-shifting課題への影響を調べた。その結果、Attentional set-shifting課題における逆転課題において、側坐核のD2細胞が重要な役割を担っていることを示した。 さらに、視覚性図形弁別学習課題において、無報酬と図形(CS-)を関連付けさせ、CS-への反応を抑制する必要のある意思決定課題を開発した。まず、マウスはこの意思決定課題を2週間ほどの学習ののちに実施できることを示した。次に、意思決定行動中のD1細胞とD2細胞の神経活動を小型顕微鏡により一細胞レベルでカルシウムイメージングを行い、D2細胞が誤答の直後のタイミングで特異的な活性化のパターンを示すことが分かった。そこで、光遺伝学手法により、活性化しているタイミングでD2細胞の活動抑制を行うと、次の試行での課題正答率が低下することが示された。これらの結果から、誤答直後のD2ニューロンの活性化が同じ失敗を繰り返さない戦略的な意思決定に必要であることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
戦略的な意思決定を必要とするマウス行動課題を開発し、意思決定行動中の神経活動イメージングにより、側坐核D2細胞の特異的な神経活動パターンを見出すことができた。さらに、光遺伝学的手法により、この神経活動が戦略的な意思決定に必要であることを示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
意思決定行動中の一細胞レベルでの神経活動イメージングから、D1細胞およびD2細胞の両方にさらなる下位分類があることが想定された。そこで特に入力回路と出力回路に着目して、それぞれの下位回路の役割を調べていく。また、精神神経疾患モデルマウスを用いて、戦略的な意思決定行動における精神神経疾患病態とその神経機構を明らかにしていく。
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