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2023 年度 実績報告書

微小管結合タンパク質の機能損失が個体間コミュニケーションに与える影響

研究課題

研究課題/領域番号 22H02946
配分区分補助金
研究機関日本大学

研究代表者

宮坂 知宏  日本大学, 薬学部, 教授 (90342857)

研究分担者 小林 耕太  同志社大学, 生命医科学部, 教授 (40512736)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワードtau / MAP2 / 微小管結合タンパク質 / 聴覚障害 / 育児行動 / MAPs
研究実績の概要

Tau/MAP2 型微小管結合タンパク質 (MAPs) は、共通の遺伝子から派生したパラログである。それぞれの微小管結合ドメインの構造は、種間において高く保存されていることから、生命機能に対する重要性が想定される。しかし、微小管重合促進および安定化といった共通の分子機能が認められているものの、生理的意義については不明であった。タウについては病理学的、遺伝学的にも認知症と強い関連が認められるものの、他の MAPs については疾患との関わりを示唆する報告も無い。本研究では、タウ型MAPs の生理機能とその機能損失の影響を明らかとする目的で、tau-KO, MAP2-KO およびそれらを掛け合わせた double-KO マウスの解析を行った。
これまでに、タウ型MAPs の生理機能とその機能損失の影響を明らかとする目的で、tau-KO, MAP2-KO およびそれらを掛け合わせた double-KO マウスを作出し解析を行った。その結果、MAP2-KO では聴覚障害を、double-KO では育児行動障害を認めた。本研究では、それぞれの病態メカニズムの解明を目指し、MAP2-KO については SEMを用いた蝸牛外有毛細胞の形態評価およびマウス聴覚特性行動評価系の確立を行った。また、Double-KO マウスにおける育児行動障害メカニズムについて、網羅的発現解析とともにオキシトシン神経細胞軸索の形態学的解析をおこなった。また、出産後育児行動時の血中オキシトシン濃度について血液生化学的定量を試みた。さらにオキシトシン神経細胞賦活による行動改善を目指した実験系の開発を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

【聴覚伝導におけるMAP2の機能】これまでの脳生理学的および形態学的解析により、MAP2-KO の聴覚障害は外有毛細胞の細胞脱落あるいはその機能不全が原因と考えた。さらに走査型電子顕微鏡による解析を行った結果、聴覚受容に必須な感覚毛の長さについては、高音域を担う Base、中音域を担う Middle、低音域を担う Apex ともに差が認められなかった。一方その形態には差異が認められ、MAP2-KO では感覚毛が倒れ込むように乱雑に配置されていることが確認された。MAP2 欠損は外有毛細胞における感覚毛の剛性が失われることで聴覚障害になる可能性が高いとの見解を得た。
【MAP2欠損によるマウスの行動異常】MAP2 欠損は聴覚以外の感覚毛の機能不全につながる可能性がある。MAP2の機能消失が他の感覚モダリティに影響を与える可能性について、平衡感覚系の評価として rotarod test および beam test を行った。その結果、いずれの解析においても MAP2-KO マウスにおいて平衡機能障害を示唆する結果が得られた。
【tau / MAP2 が育児行動を支えるメカニズム】DKO 特異的なOxt産生障害機構として、室傍核Oxt産生細胞における分泌機能障害が想定されている。今年度は、DREADD による人為的なOxt分泌神経細胞の興奮とそれによる DKO マウス育児行動障害の改善を解析する目的で、デザイナー受容体 (hM3D) 発現用アデノ随伴ウイルスを作成した。現所属研究機関での MAP2-KO, tau-KO マウスの飼育開始が 2023 年度後半となったため、マウスへの感染実験およびその評価は 2024 年度に行うこととした。

今後の研究の推進方策

【聴覚伝導におけるMAP2の機能】MAP2-KO マウス外有毛細胞の機能障害について、さらなる解析を進める。主に発生期に注目し、感覚毛の構造的基礎となるクチクラプレートの構造さらには外有毛細胞の発生について異常の有無を確認する。また、外有毛細胞の機能的な評価として in situ によるカルシウムイメージングに挑む。
【MAP2欠損がマウスの行動に与える影響】前年度の解析により MAP2-KO では聴覚のみならず平衡感覚においても異常がある可能性を見出した。この原因究明の一端として耳石器または半規管における感覚毛の機能不全が想定される。これら平衡感覚を司る感覚毛の異常の有無について形態学的解析を行う。
【tau / MAP2 が育児行動を支えるメカニズム】現所属機関におけるマウスの繁殖を進める。同時に野生型マウスを用いた解析法の確立に集中し、tau-KO、MAP2-KO、DKOマウスが生育次第速やかに解析が進められるような準備を整える。オキシトシン神経の障害と同様の異常がバソプレシン分泌神経でも認められるか組織学的解析を行う。さらに DREADD による人為的なオキシトシン分泌神経細胞の興奮とそれによる DKO マウス育児行動障害の改善を解析する目的で、作成したデザイナー受容体 (hM3D) 発現用アデノウイルスを野生型マウスに感染させ、その発現を確認する。DKO マウスの繁殖が進めばその育児行動の改善について検証する。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Quantitative Microtubule Fractionation Technique to Separate Stable Microtubules, Labile Microtubules, and Free Tubulin in Mouse Tissues2023

    • 著者名/発表者名
      Hagita-Tatsumoto Ayaka、Miyasaka Tomohiro
    • 雑誌名

      Journal of Visualized Experiments

      巻: - ページ: -

    • DOI

      10.3791/63358

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] タウの生理的なプロテオスタシスの破綻が認知症発症のカギとなる2023

    • 著者名/発表者名
      Tomohiro Miyasaka
    • 学会等名
      第66回日本神経化学会大会
  • [学会発表] 軸索局在をもたらす Tau 発現の臨界期解析2023

    • 著者名/発表者名
      上田遼之、山本亮良 、大石康二、元山純、宮坂知宏
    • 学会等名
      第66回日本神経化学会大会
  • [学会発表] マウス脳におけるタウの局所濃度決定方法の確立2023

    • 著者名/発表者名
      前田希、堀琴和、大江洋平、宮坂知宏
    • 学会等名
      第66回日本神経化学会大会
  • [学会発表] 生理的条件下における遊離型タウ結合因子の同定2023

    • 著者名/発表者名
      辰本彩香、渡邉淳、宮坂知宏
    • 学会等名
      第66回日本神経化学会大会
  • [学会発表] 新規難聴原因遺伝子 MAP2 の生理機能:オペラント条件づけを用いた MAP2 ノックアウトマウスの兆アック特性計測2023

    • 著者名/発表者名
      福沢恵美、新家一樹、伊藤優樹、宮坂知宏、原田彰宏、小林耕太
    • 学会等名
      第46回日本神経科学大会
  • [学会発表] 概日リズムとアルツハイマー病2023

    • 著者名/発表者名
      久保厚子、長野護、宮坂知宏、重吉康史
    • 学会等名
      第46回日本神経科学大会
  • [学会発表] Does loss of MAP2 function affect sound perception? Measureing auditory characteristics using operant conditioning2023

    • 著者名/発表者名
      Emi FUkuzawa, Kazuki Shin'ya, Misaki Takaoka, Yuki Ito, Tomohiro Miyasaka, Nobut Kakuda, Akihiro Harada, Khota Kobayashi
    • 学会等名
      IBAC2023
    • 国際学会

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公開日: 2024-12-25  

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