研究課題
NUTの標的分子の候補として同定したタンパク質を、ヒトcDNAライブラリーからクローニングし、大腸菌から精製して表面プラズモン共鳴 (BiaCore)解析を行った。標的タンパク質はN末端にHis-tagをつけて、NTA-センサーチップに固定した。しかしながら、タンパク質をセンサーチップに安定に固定することはできたが、NUT-29をはじめとしたNUT化合物が、センサーチップ自身と非特異的な結合をしてしまうことがわかり、Biacore解析ができないことがわかった。NUT化合物の標的分子を、マグネットビーズと共有結合させたNUT化合物と共沈降させ、ウエスタンブロッティングにより、NUT化合物依存的に検出されることを確認した。このことは、少なくても候補分子(proteinX)はNUTに結合することを意味している。そこで、proteinXのノックダウンコンストラクトを作成し、タウ凝集細胞株に導入してNUT化合物によるタウ凝集抑制効果を調べた。その結果、proteinXのノックダウンによる細胞増殖抑制が観察されたものの、NUT化合物によるタウ凝集体の抑制効果が有意に現象した。このことは、proteinXがNUT化合物の標的分子の一つであり、タウ凝集体分解促進のためのシグナルカスケードの一端を担っていると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
NUTの標的分子(proteinX)は予定どおりほぼ確定したが、Biacore解析がうまく行っていないため、その分子とNUTの結合定数を測定するには至っていない。結合定数を測定することで、NUTがp62リン酸化促進に必要な濃度と比較し、proteinX単独の効果であるのかどうかについて検討したい。proteinXのKDにより、タウ凝集抑制効果が減少することは確認できているので、研究全体の進捗は順調である。
BiacoreのセンサーチップにNUTを結合させる実験系を構築し、精製したproteinX やproteinXの断片との結合定数を測定する。タンパク質自身はセンサーチップに非特異的に結合しないことがわかっており、NUT-化合物の可変領域にビオチンを共有結合させた化合物を有機合成して、アビジン結合センサーチップに固定してproteinXとの結合定数を測定する。実際の結合が確認できたら、その結合領域を特定し、変異導入などすることによりNUTとの結合領域を特定し、NUTの結合によりどのような効果か生じるのかについて検証していく。
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