研究課題
パーキンソン病の新規治療法の開発には病態に基づいた治療介入が早道であるのは言うまでもない。旧来、2つの特筆すべき病態、『凝集体形成』と『ミトコンドリア障害』に知見が集積している。そこで損傷ミトコンドリアが蓄積する『ミトコンドリアモデル』とオートファジーが破綻した『凝集体モデル』の2系統を樹立し、パーキンソン病モデルとして提案してきた。本研究はパーキンソン病のモデルマウスを経時的、横断的に解析しパーキンソン病の病態に迫る研究である。2023年度はミトコンドリア障害を持ちつつ凝集体を形成するCHCHD2ノックアウトマウスとパーキンソン病の病的変異T61Iノックインマウスの解析を行なった。CHCHD2ノックアウトマウスを長期に飼育し凝集体の形成過程を観察した。方法としてはマウス脳を4%パラホルムアルデヒドにより固定後にドーパミン神経領域を薄切し、免疫染色により観察した。4ヶ月齢、8ヶ月齢、12ヶ月齢のマウスについて病理学的検討を実施した。その結果、老化に伴いsynucleinの蓄積が増加し、12ヶ月頃より凝集体を形成し始めることが判明した。同時に中脳からミトコンドリア分画を採取し保存した。凝集体が形成し始める時期の直前のミトコンドリアタンパク質の変化を見出すべく網羅的な解析を実施した。CHCHD2ノックインマウスでは早期にパーキンソン病類似の運動症状を発症し、病理学的には凝集体の形成を観察した。CHCHD2 T61I変異細胞のin vitroの解析から変異CHCHD2タンパク質のミトコンドリアへの移行が阻害されることが凝集体形成の原因となることが推測された。
2: おおむね順調に進展している
マウスの解析も順調に進んでいるためおおむね予定通りに進展している。
計画は予定通り進展しているため、今後も引き続きマウスの経時的な病理学的検討を続けるとともに、ミトコンドリアサンプルの採取を行い最終的なミトコンドリアタンパク質の変化を見出す。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
J Steroid Biochem Mol Biol.
巻: 230 ページ: 106275
J Nutr Sci Vitaminol.
巻: 69 ページ: 90-97
Sci Rep.
巻: 28 ページ: 6962
EMBO Mol Med.
巻: 11 ページ: e17451
巻: 13 ページ: 18528