研究課題/領域番号 |
22H02963
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
関谷 倫子 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 認知症先進医療開発センター, 副部長 (40367412)
|
研究分担者 |
飯島 浩一 国立研究開発法人国立長寿医療研究センター, 研究所 認知症先進医療開発センター, 部長 (50632535)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
キーワード | アルツハイマー病 / 神経血管ユニット / マウスモデル / ショウジョウバエ |
研究実績の概要 |
本年度は,グリア終足分子のアルツハイマー病病理形成における役割を明らかにするために以下の研究を実施した。 1. 昨年度に作製したアデノ随伴ウイルスベクター(AAV-GfaABC1D-mCherry-miRNA)を,3ヶ月齢の雄Aβ病理モデルマウス(ヒトAPPとTauのダブルノックイン)に対し,眼窩静脈叢より投与した。標的とする分子2種類に対して,それぞれ標的の異なるmiRNAを2種類ずつ,またコントロールとして,non-targeting miRNAを投与し,投与後,3ヶ月飼育個体については,脳組織の採取を行なった。9ヶ月飼育個体については,来年度の組織採取を予定している。採取済み脳組織については,凍結切片を作製し,標的分子のノックダウン効率の確認と,miRNA発現部位でのグリアの活性化,血管への終足分子の集積,アミロイド病理の変化について解析を行っている。 2. 血液バイオマーカーの探索を行う目的で,24ヶ月齢のAβ病理モデルマウス血液中のメタボローム解析を実施した。解析は,CE-TOFMSにより実施し,Aβ病理モデルマウスにおいてNAD代謝に関連する代謝物が血漿中にて変動することを明らかにした。 3. ショウジョウバエAβモデルを用いた検討では,脳内で産生されたアミロイドの排出や代謝に関わるグリア細胞由来分子の探索を行う目的で,RNAシーケンス解析を実施した。具体的には,神経細胞から細胞外にAβが分泌されるモデルショウジョウバエにおいて,タグ付きのリボソームタンパク質をグリア特異的に発現することで,免疫沈降によりグリア細胞のみを回収し,グリア特異的な遺伝子発現プロファイルを取得した。現在遺伝子発現データを解析しており,細胞外でのAβの発現増加に伴うグリア細胞の変化を遺伝子レベル,パスウェイレベルで明らかにする予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね計画通りに進展している。AAV投与によるモデルマウス実験,バイオマーカー探索,ショウジョウバエを用いた探索的研究,それぞれの実験に関し,実施順序や進行度は予定と異なる点もあるが,全体的には順調に進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
マウスモデルを用いた検討に関しては,採取済みの脳組織から順次解析を行う。凍結切片を作製し,免疫組織染色により標的分子のノックダウン効率の確認を行い,mCherryの発現から同定されるmiRNA発現部位を中心に,ミクログリアやアストロサイトの活性化,血管へのアストロサイト終足分子の集積度合い,アミロイド病理の変化について解析を行う。さらに,加齢中の個体については,順次組織採取を行い解析へと進める。また,アストロサイト終足分子の過剰発現についての検討を開始する。 バイオマーカー探索については,本年度明らかにした血漿中のNAD代謝関連代謝物の変化が,脳のアミロイド病理ならびにアストロサイトの変化とどの様な関係にあるのかを,免疫組織染色,遺伝子発現解析,タンパク質発現の解析等から明らかにする。 ショウジョウバエを用いた検討では,細胞外でのAβの発現増加に伴うグリア細胞の変化を遺伝子レベル,パスウェイレベルで明らかにし,最も影響のあると考えられる遺伝子を候補遺伝子とし,それら遺伝子の抑制あるいは過剰発現により,脳内で産生されたアミロイドの排出や代謝に変化があるかどうかをin vivo(ショウジョウバエ)にて検討する。
|