研究課題
高齢期の身体機能低下は、医療や介護などの社会保障に甚大な影響を及ぼす問題であり、超高齢化時代を迎える我が国において最重要課題である.慢性疾患を二つ以上有する場合(多疾患併存と呼ぶ)、高頻度の医療機関利用につながるだけでなく、加齢性身体機能低下に関連している可能性が指摘されている.一方、我々はこれまでのコホート研究において無症候性HTLV-1感染がサルコペニアなどの加齢性機能低下と関連していることを発見し、多疾患併存解析には非感染症の慢性疾患だけを対象とするのではなく、「持続性感染症」を含める必要があることを示した.しかし、本邦では地域における詳細な有病率情報に基づく多疾患併存の実態を明らかにした疫学調査はない.我々は日本の離島地域(長崎県五島市)で全住民を対象とする疫学研究拠点を有しており、五島市調剤情報共有システムを通じて得られる調剤情報と前向きコホート研究データとを連結させることが可能である.この連結によって、精度の高い調剤情報を用いた多疾患併存の精確性の高い定義を行うことが初めて可能となり、さらには処方薬剤情報に基づいたサブ解析も可能となる.本年はコホート研究データと調剤情報の結合を実施した.今後、五島市高齢者における多疾患併存の疫学的特徴および地域の医療への疾病負荷の程度を明らかにする予定である.解析方法としては、多疾患併存パターン分析手法として、探索的因子分析、階層的クラスター分析、K-meansクラスター分析、潜在クラス分析、多重コレスポンデンス分析などの統計学的理論に基づいた解析を取り入れる予定である.
2: おおむね順調に進展している
薬剤情報をコホートデータと連結する計画が予定通りに進行したため.
コホートデータを用いて因子分析を行う。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
Aging
巻: 14(20) ページ: 8258, 8269
10.18632/aging.204345