研究課題/領域番号 |
22H02978
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
堂浦 克美 東北大学, 医学系研究科, 名誉教授 (00263012)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | プリオン / セルロースエーテル / 免疫系 / 感受性 / 機序解明 |
研究実績の概要 |
日常摂取している外的要因であるセルロースエーテル(CE)に応答してプリオンの増殖を長期間にわたり抑制するメカニズムと、それに関わる宿主感受性因子を解明するため、独自の研究成果をさらに発展させるものとして以下の4つの研究に取り組んだ。 ①免疫系関与の検討 代表的な低CE感受性マウスではT細胞の発達に関わる遺伝子に異常があることが分かっているため、本年度は遺伝的背景が同様な各種T細胞系欠損マウス(6系統)を用いて、CE効果に及ぼす影響を調べた。発症経過を観察中であり、まだ実験結果は得られていない。 ②宿主感受性遺伝子の解明 gmfb遺伝子及びその近傍遺伝子の多型がCE感受性と相関することがわかっており、gmfb遺伝子より上流の未解析領域について解析を進めた。本年度は材料として戻し交配で選抜した超高感受性ヘミ接合型マウス(ZF1-6)の個体試料の解析を開始した。まだ解析途中であり結論は得られていない。 ③高活性型CEの開発と特性解析 脂溶性修飾体が、ビボにおいて高い効果を発揮するため、プリオン感染細胞における動態や作用点の解析を進めた。修飾体CEと非修飾体CEにおいて蛍光標識体を作製し、プリオン感染細胞に投与して細胞への取り込みや細胞内局在を観察した。蛍光標識がCEの抗プリオン作用に影響しないことを確認の上、細胞における動態や作用点については解析途中であり結論は得られていない。 ④単純系での機序解明 昨年度得られた結果の特異性を検証するため、他のプリオン感染細胞で検討を進めた。プリオン株間でのCE感受性に違いがあるため、色々と実験条件を変えて詳細に検討を行っている途中であり結論は得られていない。一方、試験管内プリオン増幅反応において、細胞・体液・組織ごとに作製した各粗画分を反応系に添加して、CE効果を打ち消す成分の手がかりを探る実験を開始した、解析途中であり結論は得られていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4つの研究テーマで、すべてが年度計画通りに進捗したわけではない。特に、遺伝子解明研究の進捗は予想外に難渋した。また、動物実験棟の改修のため各種T細胞系欠損マウスを用いた実験の準備にも時間を要した。また、細胞を用いた実験も結果にばらつきがあり、安定した結果を得るために実験条件を整えるのに時間を要した。したがって、全般的に進捗状況にはやや遅れがあると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果を踏まえ、最終年度として引き続き以下の4つの研究に取り組み、各研究において結論を得る。 ①免疫系関与の検討 CE作用へのT細胞の関与についてさらに詳細に検討するため各種免疫不全動物を用いた解析を引き続き進める。具体的には、遺伝的背景が同様である各種T細胞系欠損マウス(TCRβ欠損、TCRδ欠損、CD4欠損、β2ミクログロブリン欠損、IL-7欠損マウスなど、対照はC57BL/6J)を用いて、T細胞系列の欠損がCE効果に及ぼす影響を明らかにする。 ②宿主感受性遺伝子の解明 引き続きgmfb遺伝子近傍の未解析領域の解析を進めるが、材料として戻し交配で選抜した超高感受性ヘミ接合型マウス(ZF1-6)の個体試料の解析を継続し、宿主感受性遺伝子候補の絞り込みを進める。 ③高活性型CEの開発と特性解析 脂溶性修飾CEの蛍光標識体を用いたプリオン感染細胞における動態や作用点の解析を引き続き進める。また、得られた結果の特異性を検証するため、他のプリオン感染細胞において結果の再現性を確認する。 ④単純系での機序解明 複数のプリオン感染細胞における解析を引き続き進め、細胞株に依存しない普遍的な要素の抽出を行う。また、試験管内増幅反応を用いたCE効果を打ち消す成分の探索では、粗画分を用いた実験の結果を踏まえ精製度合いを上げた精製画分を用いた実験を繰り返し、CE効果を打ち消す成分の絞り込みを進める。
|