福山型筋ジストロフィーおよび類縁疾患の病態解析と治療法・薬効評価法の開発

2022 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 22H02983
• 配分区分: 補助金
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 小林 千浩 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (90324780)
• 研究期間 (年度): 2022-04-01 – 2025-03-31
• キーワード: 筋ジストロフィー / 糖鎖 / 遺伝子 / 治療 / 脳神経疾患 / リビトールリン酸 / 遺伝子治療 / モデルマウス

研究実績の概要

福山型筋ジストロフィーは、先天性筋ジストロフィー・II型滑脳症・眼奇形を示す常染色体劣性の難病である。本研究ではジストログリカノパチー、特に日本に特異的に多い福山型筋ジストロフィーを中心に、発症原因となるリビトールリン酸修飾に関わる酵素活性を組織レベルで追求してリビトールリン酸異常症という疾患概念を確立し、ジストログリカノパチーのさらなる病態解析を行う、また我が国の筋ジストロフィー研究の重要課題である福山型筋ジストロフィーの治療へ向けて、分子標的治療であるアンチセンス核酸治療、AAV遺伝子治療、低分子化合物治療など様々な治療法開発実験を行い、臨床応用可能な治療法を確立し、臨床試験へとつなぐことを目的とする。
本年度は以下の実験を行ってきた。
①リビトールリン酸修飾に関わる酵素の活性：アクセプター基質として、FKTN、FKRP遺伝子をノックアウトしたHEK293細胞に強制発現させた融合αDGタンパク質を作成しており、またFKTNのアクセプター基質になる蛍光ラベルした糖鎖を２種類化学合成した。検出系はUVと蛍光でのHPLC測定とした。②アンチセンス核酸医薬候補品の、FKTN・ジスフェルリン遺伝子ダブル変異マウスを用いた信頼性基準適用試験(薬理試験)の追加試験を行った。③AAV遺伝子治療薬の最適化：骨格筋と脳に対する治療を考慮し、AAV9ベクターの作成を行った。一方で細胞系での評価のために、AAV2ベクターの作成も行った。⑤骨格筋特異的ISPDノックアウトマウスの創生：Myf5プロモーターを用いたコンディショナルノックアウトマウスを作成し、病態解析を行った。

現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

リビトールリン酸修飾に関わる酵素の活性測定のためのアクセプター基質作成にて、予期しない大量細胞培養機器の故障が生じ、中断せざるを得なくなったため、次年度にずれ込んでしまうが、その他の研究計画についてはおおむね順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

これまでに得られた結果に基づき今後も継続して解析を行い、研究計画に従って、リビトールリン酸修飾に関わる酵素の活性測定系の確立、アンチセンス核酸医薬候補品の、より適切なフクチン・ジスフェルリン遺伝子ダブル変異マウスを用いた信頼性基準適用試験(薬理試験)の追加試験見直し、AAV遺伝子治療薬の最適化、スプライシング制御低分子化合物の開発、骨格筋特異的ISPDノックアウトマウスの検討を行う。

研究成果

• [雑誌論文] Comparative whole transcriptome analysis of Parkinson’s disease focusing on the efficacy of zonisamide (2022)
  • 著者名/発表者名: Naito Tatsuhiko、Satake Wataru、Cha Pei-Chieng、Kobayashi Kazuhiro、Murata Miho、Toda Tatsushi
  • 雑誌名: Journal of Neurology, Neurosurgery & Psychiatry 巻: 93 ページ: 509～512
  • DOI: 10.1136/jnnp-2021-328742
  • 査読あり
• [雑誌論文] CDP-ribitol prodrug treatment ameliorates ISPD-deficient muscular dystrophy mouse model (2022)
  • 著者名/発表者名: Tokuoka Hideki、Imae Rieko、Nakashima Hitomi、Manya Hiroshi、Masuda Chiaki、Hoshino Shunsuke、Kobayashi Kazuhiro、Lefeber Dirk J.、Matsumoto Riki、Okada Takashi、Endo Tamao、Kanagawa Motoi、Toda Tatsushi
  • 雑誌名: Nature Communications 巻: 13 ページ: 1847
  • DOI: 10.1038/s41467-022-29473-4
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] TDP-43 regulates cholesterol biosynthesis by inhibiting sterol regulatory element-binding protein 2 (2022)
  • 著者名/発表者名: Egawa Naohiro,Izumi Yuishin,Suzuki Hidefumi,Tsuge Itaru,Fujita Koji,Shimano Hitoshi,Izumikawa Keiichi,Takahashi Nobuhiro,Tsukita Kayoko,Enami Takako,Nakamura Masahiro,Watanabe Akira,Naitoh Motoko,Suzuki Shigehiko,Seki Tsuneyoshi,Kobayashi Kazuhiro,Toda Tatsushi,Kaji Ryuji,Takahashi Ryosuke,Inoue Haruhisa
  • 雑誌名: Scientific Reports 巻: 12 ページ: 7988
  • DOI: 10.1038/s41598-022-12133-4
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] CDP-リビトールプロドラッグ治療はISPD欠損筋ジストロフィーマウスモデルを改善する (2022)
  • 著者名/発表者名: 徳岡 秀紀, 今江 理恵子, 中島 瞳, 萬谷 博, 増田 千明, 星野 駿介, 小林 千浩, Lefeber Dirk, 松本 理器, 岡田 尚巳, 遠藤 玉夫, 金川 基, 戸田 達史
  • 学会等名: 第95回日本生化学会大会
• [学会発表] ジストログリカノパチーモデルマウスの中枢神経病態の解析 (2022)
  • 著者名/発表者名: 首藤 篤史, 金川 基, 小林 千浩, 戸田 達史
  • 学会等名: 第8回日本筋学会学術集会
• [学会発表] 福山型先天性筋ジストロフィーに対するアンチセンス核酸治療薬NS-035の医師主導治験 (2022)
  • 著者名/発表者名: 藤野 悟央, 北村 明日香, 高橋 朗子, 首藤 篤史, 前田 明子, 久保田 暁, 小林 千浩, 小牧 宏文, 池田 真理子, 石垣 景子, 戸田 達史
  • 学会等名: 第8回日本筋学会学術集会
• [学会発表] CDP-リビトールプロドラッグ治療はISPD欠損筋ジストロフィーマウスモデルを改善する (2022)
  • 著者名/発表者名: 徳岡 秀紀, 今江 理恵子, 中島 瞳, 萬谷 博, 増田 千明, 星野 駿介, 小林 千浩, Lefeber Dirk J., 松本 理器, 岡田 尚巳, 遠藤 玉夫, 金川 基, 戸田 達史
  • 学会等名: 第8回日本筋学会学術集会