研究課題
福山型筋ジストロフィーは、先天性筋ジストロフィー・II型滑脳症・眼奇形を示す常染色体劣性の難病である。本研究ではジストログリカノパチー、特に日本に特異的に多い福山型筋ジストロフィーを中心に、発症原因となるリビトールリン酸修飾に関わる酵素活性を組織レベルで追求してリビトールリン酸異常症という疾患概念を確立し、ジストログリカノパチーのさらなる病態解析を行う、また我が国の筋ジストロフィー研究の重要課題である福山型筋ジストロフィーの治療へ向けて、分子標的治療であるアンチセンス核酸治療、AAV遺伝子治療、低分子化合物治療など様々な治療法開発実験を行い、臨床応用可能な治療法を確立し、臨床試験へとつなぐことを目的とする。本年度は以下の実験を行ってきた。①リビトールリン酸修飾に関わる酵素の活性: FKTN、FKRP遺伝子をノックアウトしたHEK293細胞に強制発現させた融合αDGタンパク質をアクセプター基質とした検出法では、UVを用いたHPLCでの分離が困難であった。一方、FKTNのアクセプター基質になる蛍光ラベルしたCoreM3型化学合成糖鎖では、蛍光でのHPLC検出による分離条件を設定することができた。ドナー基質、酵素反応条件も整えることができた。②アンチセンス核酸医薬候補品のFKTN・ジスフェルリン遺伝子ダブル変異マウスを用いた信頼性基準適用試験(薬理試験)の追加試験の見直しを行い、さらに追加実験を重ね、終了させることができた。③AAV遺伝子治療薬の最適化:ウイルスを大量に作製することを試みており、作製条件の最適化を検討した。④スプライシング制御低分子化合物の開発:異常スプライシングをモデル化した発現コンストラクトの構築と細胞の選択を行っている。⑤骨格筋特異的ISPDノックアウトマウスの創生:研究を継続し、病態解析を実施、CDP-リビトールによる治療効果の検討を行った。
2: おおむね順調に進展している
測定条件の最適化などの条件設定に多少の時間がかかっているが、研究全体としてはおおむね順調に進捗している。
これまでに得られた結果に基づき今後も継続して解析を行い、研究計画に従って、リビトールリン酸修飾に関わる酵素の活性測定系の確立、AAV遺伝子治療薬の最適化、スプライシング制御低分子化合物の開発、骨格筋特異的ISPDノックアウトマウスの検討を行う。
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The Journal of Biochemistry
巻: 175 ページ: 418~425
10.1093/jb/mvad115