研究課題/領域番号 |
22H02992
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
三島 和夫 秋田大学, 医学系研究科, 教授 (40239223)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 精神疾患 / 睡眠-覚醒障害 / 再発リスク / 生体センシング / ウェアラブルデバイス / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究では、同一患者を病相期-寛解期-再発時にかけて縦断的に追跡して得られた睡眠・行動・生理パラメータから抽出した特徴量を説明変数として、精神疾患の悪化を予測する機械学習モデルを構築する。そのため睡眠・生体リズムパラメータ、精神症状の重症度、認知・社会機能との時間的相関性を見る縦断的調査を開始した。本年度は患者30名(統合失調症8名、うつ病10名、双極性障害9名、ほか3名)を追跡研究にエントリーした。これまでにePROおよびMTN(腰帯部装着型アクチグラフ、キッセイコムテック社)を用いた日々の精神症状、主観的および客観的睡眠状態、生活リズムを連続測定し、現在までに273夜分のSleepGraph(SG;プロアシスト社)データを集積した。今後、機械学習による中間解析を実施する予定である。次年度以降も引き続き追跡研究へのエントリーを継続する。 また、精神疾患患者におけるSGおよびFitbit Sense(FS; Fitbit社)の精度を検証するため、精神疾患患者99名(126夜)のデータを取得した。PSGとSG、FSの同時測定を行えた52名(48.1±17.2歳、M/F=20/32、統合失調症18名、大うつ病性障害19名、双極性障害3名、睡眠-覚醒障害12名)のデータ解析を行いデバイスの信頼性を検証した。感度はSGが95.20%±6.4 (SD)、FSが95.54%±3.1であり、特異度はSGが77.94%±16.6、FSが52.79%±19.6であった。Bland-Altman分析の結果、SGはPSGとの低い平均差を示したが、FSでは全ての睡眠パラメータで比例バイアスを認め、総睡眠時間が短く睡眠効率が低いほど過大評価し、睡眠潜時と中途覚醒時間が長いほど過小評価していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通りに進捗しており、計画の変更は無い
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今後の研究の推進方策 |
睡眠指標と臨床転帰との機能的相関に関する縦断的追跡調査の患者エントリーを進め、精神症状の重症度、認知・社会機能の臨床転帰の予測モデルの教師データを収集する。睡眠脳波のAI解析プログラムの精度向上のため精神疾患患者の脳波データを教師データとしたモデルの作成に着手する。本研究の成果は将来的に発症前駆期もしくは再発準備段階(at risk mental state)での早期介入の要否を判断するバイオマーカーの同定に資する可能性がある。睡眠・覚醒状態や活動リズムは患者のADLやQOL、プレゼンティーイズムとも紐付いた日々得られる生理データであり、精神医療の真のエンドポイント、薬物療法の副作用等を評価する際の有用なサロゲートとなり得る。
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