研究課題
本研究では、同一患者を病相期-寛解期-再発時にかけて縦断的に追跡して得られた睡眠・行動・生理パラメータから抽出した特徴量を説明変数として、精神疾患の悪化を予測する機械学習モデルを構築する。そのため睡眠・生体リズムパラメータ、精神症状の重症度、認知・社会機能との時間的相関性を見る縦断的調査を継続した。秋田大学医学部附属病院精神科に通院中のうつ病および双極症の患者を対象にFitbit Sense、Fitbit Sense2を装着し心拍、歩数、睡眠のデータを収集した。さらに電子的患者報告アウトカム(ePRO)を用いてVASによる気分や睡眠の自己評価、電子睡眠日誌を収集した。各指標は1週間の移動窓で加工して特徴量に用いた。4週毎にハミルトンうつ病評価尺度(HAM-D)を評価し、各特徴量との相関分析を行った。HAM-D≧8を閾値とした抑うつ状態を目的変数とし、HAM-Dが記録された前後3日間の特徴量との組み合わせを教師データとして機械学習モデルを作成した。モデルの評価は疾患と患者がグループをまたがないようにしたグループ付き層化10分割交差検証によって行い、評価指標はROC-AUC、特徴量重要度はSHAP値を用いた。うつ病被検者21名(平均46.8歳、男性14名/女性9名)、双極症被検者18名(平均41.3歳、男性8名/女性11名)が参加した。現在うつ病エピソードを予測する機械学習モデルを構築中である。データスクリーニングの結果、モデル構築にはうつ病18名(追跡期間平均504.4±199.6日、計1303データ、抑うつ状態552、非抑うつ状態751)、双極症13名(同473.0±169.2日、計697データ、抑うつ状態247、非抑うつ状態450)を用いた。次年度以降も引き続き追跡研究へのエントリーを継続する。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りに進捗しており、計画の変更は無い
睡眠指標と臨床転帰との機能的相関に関する縦断的追跡調査の患者エントリーを進め、精神症状の重症度、認知・社会機能の臨床転帰の予測モデルの教師データを収集する。本研究の成果は将来的に発症前駆期もしくは再発準備段階(at risk mental state)での早期介入の要否を判断するバイオマーカーの同定に資する可能性がある。睡眠・覚醒状態や活動リズムは患者のADLやQOL、プレゼンティーイズムとも紐付いた日々得られる生理データであり、精神医療の真のエンドポイント、薬物療法の副作用等を評価する際の有用なサロゲートとなり得る。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件)
Nat Sci Sleep.
巻: 15 ページ: 301-312
10.2147/NSS.S400944
Front Psychiatry.
巻: 14 ページ: 1189765
10.3389/fpsyt.2023.1189765
Sleep
巻: 46 ページ: zsad063
10.1093/sleep/zsad063