研究課題/領域番号 |
22H03007
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
水野 雄貴 北海道大学, アイソトープ総合センター, 助教 (90805194)
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研究分担者 |
上原 知也 千葉大学, 大学院薬学研究院, 教授 (10323403)
安井 博宣 北海道大学, 獣医学研究院, 准教授 (10570228)
西嶋 剣一 福島県立医科大学, 医学部、看護学部等, 講師 (60364254)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 多価効果 / 核医学治療 / 代謝性リンカー |
研究実績の概要 |
がんを標的とした核医学治療の実用化が世界中で加速している。特に、α線放出RIを用いた核医学治療は、がん細胞への傷害性の高さから大きな注目を集めている。本研究では、核医学治療の成功に欠かせない、高い腫瘍集積と低い正常組織集積を兼ね備えたRI標識薬剤の開発を目指す。具体的には、多価効果を用いた標的への集積向上を目指した薬剤設計と、代謝性リンカーを用いた正常組織への集積低減を目指した薬剤設計を融合し、革新的核医学治療薬剤の開発を行う。 令和4年度は、当初利用を計画していた多価c(RGDfK) の足場分子構造について、見直しを行った。具体的には、グルタミン酸を足場分子として2つのc(RGDfK) を導入した化合物をリガンドとして利用することを計画していたが、より優れた腫瘍集積性と滞留性を期待し、足場分子Xに 4つのc(RGDfK) を導入した4価RGDを新たに合成した。Integrin αvβ3陽性細胞としてU87MGとMDA-MB-435Sを用いて4価RGDの評価を行った結果、4価RGDはどちらの細胞株においても非常に高い細胞集積性と滞留性を示した。一方、ある多価化合物が複数の標的分子と同時結合可能かどうかは、競合剤存在下で解離速度が増加するかで判断することができる。そこで、4価RGDのU87MGとMDA-MB-435Sからの解離速度を、競合剤存在下と非存在下で比較した。その結果、4価RGDの解離速度は競合剤存在下で著しく増加し、どちらの細胞株においても4価RGDが複数のintegrin αvβ3と同時結合できていることが示された。また、U87MGを皮下移植したマウスを用いたex vivo体内動態試験の結果、4価RGDは優れた腫瘍集積性と滞留性を示し、投与24時間後においても、投与1時間後における腫瘍集積量の約80%の放射能が腫瘍に残存していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度の検討で新たに見出した4価RGDは、期待通り複数のintegrin αvβ3と同時結合することが可能であり、integrin αvβ3陽性細胞への高い集積性と滞留性を示した。そのため、代謝性リンカーを介して4価RGDのRI標識を行うことで、in vivoにおいて高い腫瘍集積と低い腎集積を達成できると考えられる。ただ、令和4年度は4価RGDの合成とその評価に時間がかかり、代謝性リンカーを導入した化合物を用いた腎集積低減の効果を検証するには至らなかった。そのため、当初の目的に向けて着実に研究は進展しているものの、腎集積低減の検証には至らなかったため、本研究課題はやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度の検討を通じ、4価RGDを有望なリガンド候補として見出した。そこで令和5年度は、代謝性リンカーを介して4価RGDのRI標識を行い、in vivoにおいて高い腫瘍集積と低い腎集積を同時に達成できるか評価する。具体的には、125IをRIとして使用し、代謝性リンカーにはGly-Lys配列を使用する。また、尿中に排泄された放射能の化学形を分析することで、腎臓においてGly-Lys配列が切断されたかを明らかにする。以上の検討を通じ、多価効果と代謝性リンカーの融合により、核医学治療に適した体内動態特性を示す新たな放射性医薬品の開発が可能となるかを評価する。
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