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2023 年度 実績報告書

放射線照射後の酸素環境がもたらす細胞生存応答機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H03032
配分区分補助金
研究機関国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構

研究代表者

平山 亮一  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 重粒子線治療研究部, 研究統括 (90435701)

研究分担者 平野 祥之  名古屋大学, 医学系研究科(保健), 准教授 (00423129)
野口 実穂  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 主幹研究員 (40455283)
小西 輝昭  国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学研究所, 上席研究員 (70443067)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード放射線 / 重粒子線 / 無酸素環境下での細胞培養 / DNA損傷修復 / 微小核形成 / 細胞生存率
研究実績の概要

本研究では、放射線照射後の酸素環境の違いによる細胞生存にまつわる応答機構を明らかにするため、放射線誘発DNA損傷の修復過程や染色体形成異常における低酸素の影響を調べ、放射線照射後の酸素環境が細胞の生死とどのような関係があるかを明らかにし、もう一つの“照射後の酸素効果”に着目する。さらに、放射線の線質を変えることで、異なる初期損傷を誘発し、その損傷に対する低酸素環境下での細胞応答も明らかにすることで、放射線治療効果を向上させる酸素を使った新たな治療戦略を提案するための新知見を見いだすことを目標としている。
放射線抵抗性を引き起こす無酸素環境下(0%酸素濃度)で放射線を照射し、継続して無酸素環境下でのDNA断片の修復動態と微小核形成を指標とした染色体異常頻度を調べた。比較対照群としては、低酸素下での放射線照射後、大気環境下(21%酸素濃度)でのDNA断片の修復動態と染色体異常頻度を調べた。2023年度は、これまで得られたX線とAr線のデータに加えて、C線とFe線のデータを新たに取得した。C線ならびにFe線照射において、照射後の無酸素環境下ではDNA断片の修復効率は低下し、低LETのC線や高LETのFe線においても同様の結果を示した。一方、微小核形成を調べると、C線やFe線照射後の無酸素下での培養で、微小核形成の頻度が大気下培養よりも低下していることがわかった。
つまり、無酸素環境下はDNA断片における修復効率を低下させる効果を見せる一方、染色体異常である微小核形成を抑制させる効果があることがわかった。異なる生物エンドポイントにおいて、無酸素による生物効果もしくは無酸素に対する生物応答の違いが観察されたことから、放射線の生物効果における酸素の関与は放射線照射時のみならず照射後においても重要な役割があることを示唆する結果を得た。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2023年度までに、X線や重粒子線照射に対する定電圧電気泳動法を用いたDSBの定量評価および修復効率については調べ終えることができた。また、微小核形成を指標にした染色体異常のエンドポイントについても、繰り返し実験が不足はしているものの、LET依存性が明らかになりつつある。重粒子線のマシンタイムが年々減少しているため、少ないマシンタイムでの効果的なデータ取得を引き続き目指す予定である。
DNA損傷や染色体異常を指標した実験では、DNA修復の関与を調べるため予備的ではあるが、DNA修復欠損細胞におけるデータ取得を始め、実験系として確立させることが出来た。2024年度はDNA損傷バイオマーカーを使ったDSBの修復動態を明らかにする予定であり、予備的な実験では低酸素下照射や低酸素下培養による実験系でバイオマーカーを用いた蛍光顕微鏡下での観察が出来ることを確認した。

今後の研究の推進方策

微小核形成を指標にした染色体異常のエンドポイントについても、概ねデータの取得に成功したが、統計的な評価を行うまでには至っていないため、3年目も継続して調査を行う予定である。当初予定していた、二動原体染色体異常についても継続してデータ取得に努める予定である。X線実験を中心に、無酸素環境下での培養細胞のDNA修復動態のメカニズム解明を進める目的で、DNA修復欠損細胞を使った実験を一部開始しており、CHO細胞を親株とする非相同末端結合(NHEJ)欠損細胞と相同組換え(HR)欠損細胞を用いて実験を引き続き行う予定である。
低酸素ワークステーションおよび低酸素インキュベータでの整備が終了したので、DNA損傷、染色体異常、細胞生存率のそれぞれのデータの関連性を明らかにしていく予定である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] LET Dependence of 8-Hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG) Generation in Mammalian Cells under Air-Saturated and Hypoxic Conditions: A Possible Experimental Approach to the Mechanism of the Decreasing Oxygen Effect in the High-LET Region2024

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Ito, Satomi Kitabatake, Wataru Furuichi, Nobuhiro Takase, Tasuku Nakahara, Tatsuki Akiyama, Shigeo Yoshida, Yosuke Kusano, Yoshiya Furusawa, Ryoichi Hirayama
    • 雑誌名

      Radiation Research

      巻: 201 ページ: 227-236

    • DOI

      10.1667/RADE-23-00046.1.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 重粒子線で低酸素影響を調べる理由は何か?2024

    • 著者名/発表者名
      平山亮一、小藤昌志、長谷川純崇
    • 学会等名
      第 15 回 Quantum Medicine 研究会
    • 招待講演
  • [学会発表] 低酸素下長期培養による放射線誘発微小核形成への影響2023

    • 著者名/発表者名
      平山 亮一、小泉 凱也、澤田 陽加、伊藤 敦、吉田 茂生、鵜澤玲子、長谷川純崇
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第66回大会
  • [学会発表] 酸素と低酸素を意識した放射線治療のための生物学2023

    • 著者名/発表者名
      平山亮一
    • 学会等名
      第60回放射線影響懇話会
    • 招待講演
  • [学会発表] Biophysical properties of heavy ion beams2023

    • 著者名/発表者名
      Ryoichi Hirayama
    • 学会等名
      Mayo-QST joint symposium
    • 招待講演
  • [学会発表] DNA修復欠損細胞における低酸素培養環境下での放射線応答解析2023

    • 著者名/発表者名
      小泉凱也、澤田陽加、平山 亮一、伊藤敦、吉田茂生
    • 学会等名
      第60回アイソトープ・放射線研究発表会
  • [学会発表] 低エネルギー炭素イオンによる断片化DNAサイズのイオントラック構造依存性2023

    • 著者名/発表者名
      間宮大晴、楠本多聞、Narongchai Autsavapromporn、Isti Qona’ atun、平山亮一、小平聡、栗田和好、小西輝昭
    • 学会等名
      第60回アイソトープ・放射線研究発表会
  • [学会発表] 放射線誘発微小核形成に対する大気下ならびに低酸素下培養が及ぼす生物影響2023

    • 著者名/発表者名
      平山亮一、小泉凱也、澤田陽加、伊藤敦、吉田茂生、高野勇貴、鵜澤玲子、長谷川純崇
    • 学会等名
      第60回日本放射線腫瘍学会生物部会学術大会
  • [学会発表] Biological responses are altered when mouse kidney cells are cultured in different oxygen concentrations after radiations2023

    • 著者名/発表者名
      Cuihua Liu、Hirokazu Hirakawa、Akira Fujimori、Ryoichi Hirayama
    • 学会等名
      第60回日本放射線腫瘍学会生物部会学術大会
  • [学会発表] DSB induction and lethal effect of Carbon ion near the Bragg peak2023

    • 著者名/発表者名
      間宮大晴, 楠本多聞, アッサワプロンポーン ナロンチャイ, イスティ コナアトゥン, 平山亮一, 小平聡, 栗田和好, 小西輝昭
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第66回大会
  • [図書] やさしくわかる放射線治療学改訂第2版2024

    • 著者名/発表者名
      平山亮一、他
    • 総ページ数
      213
    • 出版者
      株式会社Gakken
    • ISBN
      978-4-05-520052-3

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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