研究実績の概要 |
本研究では、新生児期のケトン体代謝を介した心筋成熟・心内微小環境構築機序の解明を目指して、遺伝子改変マウスをもちいた表現型の解析と、特に注目しているケトン体による遺伝子発現・エピゲノム変化について注目して解析を進めた。遺伝子発現解析については、ケトン体合成不全マウスで認める心筋成熟不全の機序を明らかにするため、ラミンとPCM1も指標として心筋細胞特異的な核抽出をおこない、1,000核から安定的にcDNAライブラリーを抽出することに成功した。得られたサンプルを用いて1細胞完全長total RNA-seq解析(RamDA-seq)を実施し、網羅的な遺伝子発現状態の比較を実施することに成功した。また、epigenome解析についても5,000核からATAC-seqを行う手技を確立し、CUT&Tag法を用いてH3K27Ac, H3K9Acについては50,000核からのヒストン修飾状態を検出することに成功した。現在、これらのオミクスデータを統合したトランスオミクス解析を進めている。今後、異なるステージでのオミクス情報の取得と、異なるヒストン修飾の評価を進めることで、微小環境におけるケトン体代謝の働きを明らかにすることを目指している。また、心筋成熟遅延の表現型に関連して、心筋再性能の変化についても検討する意義があると考えられたため、マウス新生児を用いた心筋梗塞モデルの作成に着手している。現在野生型幼獣を用いた健闘にて安定的なモデル作成ができるようになったため、ケトン体合成不全マウスでの検討を進める。
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