研究課題/領域番号 |
22H03046
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
大友 孝信 川崎医科大学, 医学部, 教授 (20742589)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ライソゾーム病 / オートファジー |
研究実績の概要 |
ライソゾーム病は希少な遺伝性疾患で、50種類以上の疾患が含まれている。我々はこれらの病態を明らかにし治療法を開発するため、ライソゾーム病モデル細胞を構築し疾患間を比較する研究を行っている。さらにライソゾームへ基質を輸送する系の障害との関連についても検討している。 本年度はモデル細胞の種類を拡充し、幅広いライソゾーム病の解析ができる準備を行なった。モデル細胞の構築にはCRISPR/Cas9を用い、今後も研究内容に応じて種類を増やすことができる体制である。 それらの細胞を用いて細胞内分解系の一つオートファジーを評価したところ、コレステロール蓄積がその障害に大きく影響を与えていることが示唆された。現在そのメカニズムの一端を明らかにしつつある。また、ライソゾーム病では様々な基質が二次的に蓄積すると考えられる。モデル細胞のリピドミクス解析を行ったところいくつかの特徴的な脂質の蓄積パターンが認められた。今後そのメカニズムを詰めるとともに、臨床応用性について検討する。 ライソゾーム機能は細胞小器官(オルガネラ)の恒常性にも寄与すると考えられる。我々はペルオキシソームの量および形態を免疫蛍光染色で評価したが、疾患モデル細胞で明らかな変化は認めなかった。今後はミトコンドリアの評価を行なっていく予定である。 ライソゾームへ基質を輸送する機構の破綻はライソゾーム病と類似した疾患を引き起こすことが示されている。このような類似した疾患の症例の検索を引き続き行なっていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
多くのライソゾーム病モデル細胞を構築し、今後も簡単にノックアウトを行うことができる。これらのライソゾーム病モデル細胞のリピドミクス解析から特徴的な脂質のパターンを見出し、バイオマーカーとしての可能性を模索している。またコレステロール蓄積系の疾患細胞におけるオートファジーの障害について、そのメカニズムに関する新しい知見を得た。一方でペルオキシソームの蛍光免疫染色評価では疾患モデル細胞で明らかな変化は認めなかったため評価方法を再考する必要がある。ミトコンドリア系の評価はこれからである。臨床例については学会などを通じて引き続き周知を行い症例の検索を図る。
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今後の研究の推進方策 |
以下の計画で進める。 <基礎研究> セルラインに対してCRISPR/Cas9でライソゾームや小胞輸送関連遺伝子のノックアウトを行い、疾患モデル細胞のライブラリを完成させる。これらのセルラインを用いてリピドミクス解析、オートファジー・エンドサイトーシスの評価、ライソゾーム機能の評価を中心に以下のテーマで細胞機能の解析(手技としては遺伝子発現、western blot、蛍光免疫染色、電子顕微鏡観察、酵素活性測定、免疫沈降、質量分析など)を行う。 ・コレステロールに注目したライソゾーム病病態の解析:ライソゾーム病の中でも特にリピドーシスではオートファジーの機能が低下することが示唆されたため、コレステロールに注目し、オートファジー障害のメカニズムを明らかにする。オートファジーの各ステップの評価とライソゾーム酸性維持機能に注目し、遺伝子ノックアウトや脂質負荷により生じる変化を評価する。 ・小胞輸送病の病態解析:小胞輸送複合体を構成するVPSなどの遺伝子群の発現や複合体形成を評価し、これらの遺伝子欠損により影響を受ける小胞輸送(オートファジー・エンドサイトーシスのステップ)を明らかにする。 ・オルガネラヘルスの評価:小胞輸送やライソゾーム機能の破綻がオルガネラの恒常性にどの様な影響を与えるかについて、セルライン上でミトコンドリアやペルオキシソーム機能を簡便に評価できる系を構築し、網羅的な解析を開始する。 <臨床研究> 小胞輸送病の診断体制:小胞輸送複合体の欠損による疾患の報告が我々を含め出てきている。そこで、ライソゾーム病が疑われて診断がついていない症例相談を受け、VPS遺伝子群を中心に遺伝子バリアントの検索を行う。
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