研究課題
EGFR変異を伴う肺癌は、日本人の非喫煙者に発生する肺癌の半数以上を占める重要な疾患である。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は、発癌の直接的な原因であるEGFRを阻害し一過性に奏効するが、根治的な効果が得られず耐性化する。EGFR-TKI投与後に残存するpersister癌細胞と呼ばれる細胞集団が、根治の障壁として注目されているが、in vitroモデルによる研究では病態の完全解明が困難であった。申請者らは、独自にEGFR遺伝子改変マウスモデルを樹立し、in vivo persister癌細胞マウスモデルの作製に成功した。本研究では、in vivo persister癌細胞マウスモデルを用い1) persister癌細胞およびその腫瘍微小環境の包括的な遺伝子発現解析、2) 臨床応用可能な治療標的の同定、および3) in vivoでの抗腫瘍効果、腫瘍免疫活性化効果を検証する。persister癌細胞と腫瘍微小環境の双方を標的とし、癌の直接阻害および腫瘍免疫活性化による根治的な効果を誘導する革新的な新規治療の基盤データを作り、肺癌根絶を目標とした臨床開発へ橋渡しすることを目的とする。2022年度は、RNAsequencing、免疫染色、フローサイトメトリーによりEGFR-TKI投与後に残存する腫瘍とその腫瘍微小環境を評価した。現在までのところ我々は、EGFR肺癌においてEGFR-TKIは、CD8陽性T細胞を介した抗腫瘍免疫を誘導することを報告した。EGFR-TKI投与後の腫瘍微小環境において抗腫瘍免疫を最大化するための新規治療標的を探索、評価中である。
2: おおむね順調に進展している
EGFR-TKI投与後の残存腫瘍のRNAsequencing行うことで、腫瘍微小環境の改変の過程を観察し、治療標的候補の同定を行っている。複数治療候補のついて、EGFR-TKIが誘導する抗腫瘍免疫に対する増強作用を確認することができた。
RNAsequencingに加え、EGFR-TKI投与後に残存するpersister癌細胞および腫瘍微小環境をin vivo検体を用いGeMXによる空間トランスクリプトーム解析を進行中である。persister癌細胞の生存戦略のさらなる解明、さらなる新規の治療標的の同定を目指す
すべて 2023 2022 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
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