研究課題
上皮成長因子受容体変異を有する肺癌(EGFR肺癌)は、日本人の非喫煙者に発生する肺癌の半数以上を占める重要な疾患である。EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)は、EGFR肺癌に一過性に奏効するが、耐性化し治癒には至らない。EGFR-TKI投与後に残存するpersister癌細胞と呼ばれる細胞集団が、根治の障壁として注目されている。しかし、in vitroモデルではpersister癌細胞が腫瘍微小環境とどのように協調して生き延びるのか?について評価が困難であった。本研究において、独自に樹立したマウス2型肺胞上皮を起源とするEgfr肺癌マウスをベースに、in vivo persister癌細胞マウスモデルを作製した。in vivo persister癌細胞マウスモデルを用い、persister癌細胞およびその腫瘍微小環境の包括的な遺伝子発現解析を行った。現在までの検討結果において、EGFR-TKIであるオシメルチニブによりEGFR肺癌の腫瘍微小環境は動的に変化し、CD8陽性T細胞が関与する抗腫瘍免疫が誘導されるが、persister癌細胞を根絶には至らないことがわかった。persister癌細胞と腫瘍微小環境の相互作用において抗腫瘍免疫の活性化を阻害する因子の存在を確認した。抗腫瘍免疫を最大化するために、抑制系因子の阻害、また活性化因子の導入を行い、いずれもオシメルチニブが誘導する抗腫瘍免疫が増強することを確認している。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、EGFR-TKIが誘導する腫瘍免疫を抑制する因子またさらに活性化する因子をそれぞれ同定し、in vivoでその有効性を確認できている。今後は、動的に変化する腫瘍微小環境、間質細胞のプロファイルを遺伝子発現解析により評価して、より効果的に腫瘍免疫を調整する因子を同定する。
今後、in vivo persister癌細胞マウスモデルを用い、persister癌細胞およびその腫瘍微小環境の包括的な遺伝子発現解析のデータをバイオインフォマティクス解析により、動的に変化する腫瘍微小環境、間質細胞のプロファイルをより詳細に検討する。学会発表、論文投稿を行い社会に成果を発信する。
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