研究課題
CD62LをダウンレギュレートしたエフェクターCD4+ T細胞クラスターをsingle cell RNA sequencing及びmass cytometry解析することにより、抗PD-1抗体薬治療で奏効した肺癌患者末梢血から、CCR4-CCR6+というケモカインレセプター発現パターンを有する新規クラスターを発見した。IL-7 receptorやTCF7を高発現することから、Th7Rと名付けた。進行期肺癌検証コホートにおいて抗PD-1抗体薬治療の良好な効果予測性能を示し、2022年12月Cancer Research誌に発表した。また、このTh7Rクラスターについて手術可能早期肺癌コホートを用いて、末梢血、腫瘍所属リンパ節、腫瘍浸潤リンパ球解析を行った。Th7Rは腫瘍浸潤CD4+ T細胞の約1/3を占めていた。これ以外には、Th1が約30-40%、制御性T細胞が15-20%を構成していた。腫瘍所属リンパ節でも、約1/3をTh7Rが占めていたが、腫瘍からより遠隔に存在する縦隔リンパ節ではその割合が有意に少ないことが判明した。手術により肺癌組織と所属リンパ節を喪失した後、末梢血Th7R割合のみが有意に減少した。すなわち、Th7Rはがん免疫サイクル理論で示される通り、腫瘍所属リンパ節で増殖し、末梢血を通って、腫瘍局所に浸潤することで、腫瘍におけるエフェクター型CD4+ T細胞の主な構成成分となっていると考えられた。手術前末梢血Th7Rは、術後無再発生存期間を予測し、Th7R=3.05%を閾値として、P<0.0001, HR 0.100であることが判明した。本研究内容は、現在論文投稿中であり、2023年呼吸器学会で発表する。
2: おおむね順調に進展している
進行期肺癌患者末梢血から見出した新規抗腫瘍性Th7Rクラスターの存在を、腫瘍組織、腫瘍所属リンパ節で証明するとともに、その手術後無再発生存期間予測性能を明らかとすることができた。イピリムマブ+ニボルマブ治療症例、化学放射線-Durvalumab治療症例、EGFR-TKI治療症例など、肺癌症例の検体集積や解析も順調に進んでいる。
イピリムマブ+ニボルマブ治療症例、化学放射線-Durvalumab治療症例、EGFR-TKI治療症例などの各種肺癌コホートにおける観察研究を継続し、末梢血T細胞クラスター解析を進める。イピリムマブ+ニボルマブ治療コホートにおいては、抗CTLA-4抗体治療によるT細胞クラスター変化をscRNAseqを用いて解析する。Th7Rを分離し、大量細胞からの遺伝子発現解析を行うことで、詳細なcharacterizationを行う。Th7Rの特異的培養方法を明らかとする。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件)
Cancer Research
巻: 82 ページ: 4641~4653
10.1158/0008-5472.CAN-22-0112
International Journal of Molecular Sciences
巻: 23 ページ: 13241~13241
10.3390/ijms232113241
BMC Cancer
巻: 22 ページ: 1325
10.1186/s12885-022-10445-2