今後の研究の推進方策 |
Lrbaノックアウトマウスは、水のみならず塩の出納も制御していた。Lrbaをノックアウトすると、SPAKキナーゼの発現量が低下し、尿から塩を再吸収するのに必要なNa+-Cl-共輸送体を活性化できないことを明らかにしている。これらの情報をもとにLrbaノックアウトマウスを用いて採血(Na, K, Cl, Ca, Mgなど)、尿検査(尿浸透圧、Na, K, Cl など)、負荷試験(脱水試験、低塩食・高塩食負荷など)、利尿剤試験(フロセミド、サイアザイドなど)を実施し、LRBA欠損症患者において評価すべき臨床検査項目を決定する。 LRBA欠損症患者の10-20%程度に慢性腎不全を認めるが、検尿異常が無い症例が多く今まで腎不全の原因が不明であった。LRBA欠損症では、60%以上の患者に自己免疫性腸炎による慢性下痢を認め、さらに70%以上の患者が低ガンマグロブリン血症により感染症を繰り返し頻回にシックデイを経験することから、水や塩が不足しやすい状況にある。Lrbaノックアウトマウスの解析から、LRBAの機能が低下すると水と塩の尿中への排泄量が増加することを明らかにしており、脱水症の進行に拍車がかかる可能性が高い。高度の脱水症は、一過性の腎前性腎不全にとどまらず慢性腎不全へ移行する原因になる。そこで、LRBA欠損症患者の腎臓に関する患者情報を取得するために倫理審査の承認を取得した。LRBA欠損症に合併する腎機能障害に関する多施設共同後ろ向き観察研究を実施する。
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