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2023 年度 実績報告書

Ephrin-ネフリン-NRX複合体の機能解析によるスリット膜安定化機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22H03086
配分区分補助金
研究機関新潟大学

研究代表者

河内 裕  新潟大学, 医歯学系, 教授 (60242400)

研究分担者 成田 一衛  新潟大学, 医歯学系, 教授 (20272817)
金子 佳賢  新潟大学, 医歯学系, 講師 (80444157)
松井 克之  新潟大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (20256027)
葛谷 聡  京都大学, 医学研究科, 准教授 (30422950)
福住 好恭  新潟大学, 医歯学系, 准教授 (20609242)
内許 玉楓  新潟大学, 医歯学系, 助教 (00529472)
安田 英紀  新潟大学, 医歯学系, 助教 (00806490)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード慢性腎臓病 / ネフローゼ症候群 / 蛋白尿 / ポドサイト / スリット膜
研究実績の概要

慢性腎臓病は新たな国民病と位置づけられている。蛋白尿は、慢性腎臓病を進行させる悪化因子であるため、蛋白尿を早期に抑制することは、慢性腎臓病の進行を阻止する上で極めて重要である。研究代表者らは、腎糸球体上皮細胞(ポドサイト)の細胞間接着装置であるスリット膜が蛋白尿の発症を防ぐ最終バリア機能として機能しており、多くの病態での蛋白尿はスリット膜のバリア機能の障害により発症すること、Ephrin-B1、Neurexinなどのシナプス関連分子がスリット膜の細胞外部の主要構成分子であるネフリンと分子複合体を形成し、スリット膜の機能維持に関与していることなどを明らかにしてきた。
本研究課題での(1)Ephrin-ネフリン-NHERF2 -Ezrin-Actin複合体についての検討で、①Ephrin-B1-ネフリン複合体はNHERF2-Ezrinを介してActin細胞骨格と結合していること、②Ephrin-B1-ネフリン複合体はNeurexinと結合していること、③各種ネフローゼ症候群モデル病態での蛋白尿発症時、ネフリン-Ephrin-B1結合だけでなく、Ephrin-B1- NHERF2結合、NHERF2-Ezrin結合が乖離していること、を明らかにした。
(2)ネフリン-Ephrin-Par複合体についての検討では、ネフリン刺激により、ネフリンから乖離したEphrinがPar6と乖離し、Ephrinから乖離したPar6はcdc42と結合することを明らかにした。
これまでの検討で、ネフリンが刺激を受け、ネフリンのリン酸化により誘導された一連のカスケードに関わる分子群はネフローゼ症候群の新規治療の標的となると考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

初年度(令和4年度)は主にEphrin-ネフリン-NHERF2 -Ezrin-Actin複合体について検討を進め、①障害ポドサイトにおいて、EphrinB1-ネフリン、EphrinB1-NHERF2、NHERF2-Ezrinが乖離していること、②EphrinB1への直接刺激でもEphrinB1のリン酸化が誘導され、EphrinB1-NHERF2、NHERF2-Ezrin結合が乖離すること、③一連の分子結合の変化(乖離)は、JNK阻害薬で抑制されることを明らかにした。令和5年度は、リン酸化し、ネフリンから乖離したEphrinによるシグナル機構の解明を進め、①スリット膜特異的障害モデルである抗ネフリン抗体誘導腎症だけでなく、微小変化型ネフローゼ症候群モデルであるPAN腎症などでのポドサイト障害においても、ネフリン、Ephrinがリン酸化し、両者の結合が乖離すること、②HEK細胞を用いた強制発現系での検討で、リン酸化したEphrinはネフリンとだけでなく、Par6とも乖離すること、②Ephrinから乖離したPar6はcdc42と結合することを明らかにした。
これまでの検討で、Ephrin-ネフリン-NHERF2 -Ezrin複合体がスリット膜と細胞骨格の連結に重要な役割を果たしていること、ネフリンが刺激を受け、ネフリンと共にエフリンがリン酸化誘導されることにより引き起こされた分子複合体の不安定化がネフローゼ症候群の病態形成に関与していることを明らかにした。加えてEphrinがリン酸化したことにより誘導されるPar複合体の変化についても新知見を得ることができた。
以上、ネフローゼ症候群の発症に関わるシグナルカスケードに多くの新知見を得ることができたため、計画は順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

初年度はEphrinB1-ネフリン-NHERF2-Ezrin-Actin分子連関の乖離機序の検討を進め、昨年度はNeurexinの分子機能、EphrinB1によるシグナル機構についての研究を進めた。これまでの検討で、正常ポドサイトではEphrin B1はPar複合体の構成分子であるPar6と結合しているが、ポドサイト傷害時その結合が乖離することを明らかにした。今年度(令和6年度)は、Ephrin B1-Par6結合の生理的意義、同結合の乖離のポドサイト障害発症における病理学的意義についての検討を進める。
具体的には、(1)Ephrin B1-Par6乖離により誘導される下流シグナルの検討を行う。単離糸球体、培養ポドサイト細胞を用いたin vitroの系でネフリン刺激時のEphrin B1とPar複合体構成分子間の結合性の変化を検討し、その変化により誘導される下流のシグナル機構を解析する。確認されたシグナル機構に対する阻害剤、siRNAによるノックダウン系を用いて、病態形成における意義、重要性の検討を行う。
(2)並行してEphrin B1のリン酸化誘導機序の検討を進める。これまでの検討でポドサイト傷害発症にカルシニューリンの活性亢進が見られることを確認しており、TRPC6の機能亢進がスリット膜傷害の形成に重要な役割を果たしていることが報告されているため、ネフリン、Ephrin B1のリン酸化におけるCa2+流入、TRPC6の役割の検討を進める。
(3)発症機序についての基礎研究に加え臨床応用に向けた検討を進める。一連の検討で病態形成に関わることが示された分子群の治療標的としての有用性、臨床応用への可能性を検討するため、各種ネフローゼ症候群モデルでの動態を検討する。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] 14‐3‐3 Proteins stabilize actin and vimentin filaments to maintain processes in renal glomerular podocyte2023

    • 著者名/発表者名
      Yasuda Hidenori、Fukusumi Yoshiyasu、Zhang Ying、Kawachi Hiroshi
    • 雑誌名

      The FASEB Journal

      巻: 37 ページ: 1-22

    • DOI

      10.1096/fj.202300865R

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 蛋白尿2023

    • 著者名/発表者名
      河内 裕
    • 雑誌名

      腎と透析

      巻: 95 ページ: 6-11

  • [学会発表] TRPM4の発現、機能低下とその結果生じるTRPC6発現増強、Ca2+流入の増加はポドサイト障害の重要な初期変化である2024

    • 著者名/発表者名
      内許玉楓、福住好恭、安田英紀、常国慶、萱場睦、河内裕
    • 学会等名
      第67回日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] 抗ネフリン抗体検出簡便法の確立:免疫組織学的手法との感度比較2024

    • 著者名/発表者名
      萱場睦、内許玉楓、福住好恭、永井隆、常国慶、河内裕
    • 学会等名
      第67回日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] Downregulation of TRPM4 and Consequent Increase in TRPC6 Activity Are Critical Initiation Events Leading to Podocyte Injury2023

    • 著者名/発表者名
      Ying Zhang, Yoshiyasu Fukusumi, Hidenori Yasuda, Mutsumi Kayaba, Hiroshi Kawachi
    • 学会等名
      2023年アメリカ腎臓学会総会
    • 国際学会
  • [学会発表] 14-3-3 Proteins Stabilize Vimentin and Actin Filaments to Maintain Primary and Foot Processes in Podocyte2023

    • 著者名/発表者名
      Hidenori Yasuda, Yoshiyasu Fukusumi, Ying Zhang, Hiroshi Kawachi
    • 学会等名
      2023年アメリカ腎臓学会総会
    • 国際学会
  • [学会発表] Neurexin1αは細胞外部でNephrin、細胞質部でPodicin、CD2APと結合しスリット膜の構造、バリア機能維持に寄与する2023

    • 著者名/発表者名
      福住好恭、内許玉楓、安田英紀、河内裕
    • 学会等名
      第66回日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] 14-3-3蛋白質は細胞骨格とPar複合体の調節によってポドサイトの細胞突起を維持する2023

    • 著者名/発表者名
      安田 英紀、福住 好恭、内許玉楓、河内 裕
    • 学会等名
      第66回日本腎臓学会学術総会
  • [学会発表] アダプター蛋白質14-3-3はビメンチン線維とアクチン線維を安定化する事で腎糸球体上皮細胞 (ポドサイト) の一次突起と二次突起 (足突起) を維持する2023

    • 著者名/発表者名
      安田 英紀、福住 好恭、内許玉楓、河内 裕
    • 学会等名
      第166回 日本獣医学会学術集会
  • [学会発表] タクロリムスはFKBP12とアクチン関連蛋白質14-3-3、synaptopodinの相互作用を増強し、アクチン線維のFKBP12を保持する事で糸球体上皮細胞傷害を軽減する2023

    • 著者名/発表者名
      安田 英紀、福住 好恭、内許玉楓、河内 裕
    • 学会等名
      第15回日本獣医腎泌尿器学会学術集会・総会
  • [学会発表] ポドサイトの最新知見2023

    • 著者名/発表者名
      河内裕
    • 学会等名
      第14回日本臨床一般検査学会
    • 招待講演
  • [図書] 専門医のための腎臓病学 第3版2023

    • 著者名/発表者名
      河内 裕 他
    • 総ページ数
      680
    • 出版者
      医学書院
    • ISBN
      978-4-260-05100-2
  • [備考] 新潟大学 腎研究センター 腎分子病態学分野

    • URL

      https://www.med.niigata-u.ac.jp/nim/welcomej.html

  • [備考] 新潟大学 腎研究センター

    • URL

      https://www.med.niigata-u.ac.jp/npa/index.html

  • [備考] 新潟大学 医学部医学科 医歯学総合研究科

    • URL

      https://www.med.niigata-u.ac.jp/contents/activity/research/bunshi/index.html

  • [産業財産権] ネフローゼ症候群の診断を補助するためのマーカー及びその使用2023

    • 発明者名
      河内 裕
    • 権利者名
      河内 裕
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2022/000138
    • 外国

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公開日: 2024-12-25  

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