研究実績の概要 |
2型糖尿病患者のコホート研究で、尿レクチンアレイ法による糖鎖の網羅的解析を施行したところ、尿中レクチン(SNA, ABA, Jacalin, ACA, RCA120)への結合シグナルの上昇が腎機能低下のリスクであることを見出した。これらのレクチンが認識する糖鎖は糖タンパク質上のT-antigen, Tn-antigen, sialyl-T, sialyl-Tn,Core 3で、いずれもO-グリコシル化の初期段階で認められる伸長反応不全型糖鎖で癌抗原としてよく知られているが、尿中の糖尿病性腎臓病(DKD)関連糖鎖抗原とも考えられる。レクチン組織化学によってこれらの糖鎖抗原は近位尿細管細胞に発現している。DKD糖鎖抗原はその受容体であるマクロファージ上に発現する膜タンパク質であるCLEC10A, MGL2(C型レクチン受容体)にリガンドとして作用し、細胞内シグナルを介して炎症を惹起し、DKDの尿細管間質病変を進展させるとの仮説を立てた。糖尿病モデル動物であるdb/dbマウス、Akitaマウス、それぞれの正常血糖コントロール動物であるdb/mマウス、C57BL/6マウスの腎組織で、SNA,RCA120, ABA, Jacalin, ACAを用いたレクチン組織化学、C型レクチン受容体であるCLEC10A, MGL2の免疫組織化学を施行する。DKD糖鎖抗原が近位尿細管細胞に、CLEC10A, MGL2がマクロファージに発現していることを確認した。C型レクチン受容体であるClec10aおよびMgl2は第11染色体に近接して存在し、アミノ酸配列の相同性88%であり、糖鎖認識も類似している。そこでRBRC01891(B6.129-lec10a<tm1Hed>/TatsRbrc)、RBRC01893 (B6.Cg-Mgl2<tm1Tats>/TatsRbrc)を入手し個体化を行った。
|