研究実績の概要 |
Ichthyosis with confetti (IWC)とロリクリン角皮症 (loricrin keratoderma, LK)は、それぞれケラチン1/10遺伝子変異、ロリクリン遺伝子変異により発症する常染色体優性(顕性)遺伝性疾患である。IWCとLKは遺伝性疾患であるにも関わらず、患者皮膚の一部で相同組換えにより遺伝子変異が後天的に消失し、自然治癒することが知られている。本研究では、IWCやLKで見られる相同組換えが常に変異のセントロメア側からテロメアまでであることに着目し、変異ケラチンや変異ロリクリンがbreak-induced replication (BIR)を誘導し病因変異が消失するという仮説を立てた。まず、変異ケラチン1または10を発現するコンストラクトを作成し、Tet-Onシステムを用いて安定発現細胞株を作成した(比較対照として野生型の細胞株も作成した)。この細胞を用いて、DNA損傷のマーカーであるγH2AXの発現を評価したが、野生型と比べて変異ケラチン1または10による変化は見られなかった。複製ストレスを誘導する薬剤(ヒドロキシウレアやアフィディコリン)を添加した状態でも同様にγH2AXの発現を検討したが、野生型ケラチン1または10を用いた場合と比べて変化が見られなかった。複製ストレスを与える時間や試薬濃度を変更しながら、野生型と変異体の間で差が見られる条件を検討中である。また、変異体が液液相分離する特性を見出し、DNA損傷やBIRの誘導への関与を検討中である。
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