研究実績の概要 |
アトピー性皮膚炎は最も頻度の高い慢性炎症性皮膚疾患の一つであり、その免疫病態獲得免疫系、自然免疫系が複雑に関与している。しかし、獲得免疫系の活性化機構、自然免疫系の生理的意義、病態形成における獲得免疫系と自然免疫系の相互関係性は未だ不明な点が多い。さらに、多くの知見は動物モデルを用いた解析から得られており、ヒトにおける意義は依然不明である。本研究では、ヒト検体を用いてアトピー性皮膚炎病変部における自然免疫系細胞と獲得免疫系細胞の活性化機序に取り組んだ。 アトピー性皮膚炎はタイプ2サイトカインによって生じる炎症であり、病変部でのその主な産生細胞は獲得免疫系細胞であるTリンパ球である。したがってアトピー性皮膚炎患者皮膚生検組織をIL-2, aCD3/CD28抗体入り培地で培養し、Tリンパ球を培養した。培養リンパ球をTCR刺激下で各種アラーミン(TSLP,IL-18, IL-33, IL-25,IL-1)で刺激し、そのIL-4, IL-13などのタイプ2サイトカイン産生能についてフローサイトメトリー解析をおこなった。その結果、アラーミンで刺激によりタイプ2サイトカイン産生が増強されることが明らかとなった。すなわち、獲得免疫系細胞の活性化が自然免疫系細胞の活性化因子により誘導される可能性がしめされた。一方で、アラーミン刺激により活性化が強く誘導される患者リンパ球と、誘導が弱い患者リンパ球が存在することも明らかとなった。病態形成に関わる免疫細胞以外の細胞集団として、さらに血管内皮に着目した。ヒトアトピー性皮膚炎病変部では、PNAd陽性の毛細血管が発達していた。その形成機序としてリンホトキシンが関与していることを明らかとした。また機能的には皮膚炎症時のリンパ球浸潤を促進的に制御し、炎症の再燃に関与している可能性をマウスモデルを用いて明らかとした。
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