研究課題/領域番号 |
22H03102
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
早川 文彦 名古屋大学, 医学系研究科(保健), 教授 (30402580)
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研究分担者 |
安田 貴彦 独立行政法人国立病院機構(名古屋医療センター臨床研究センター), その他部局等, 分子診断研究室長 (20723977)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 急性リンパ性白血病 / CEBP-IGH / ZNF384融合遺伝子 / GSEA / RNA-seq |
研究実績の概要 |
本研究では、CEBP-IGHとZNF384融合遺伝子の白血病化機序を解明することを目的に研究を行っている。今年度は主にCEBP-IGHに関して研究を進めた。CEBP-IGH陽性ALLでは、本来リンパ球に発現しないCEBPが、IGHの作用により異所性に発現し、B細胞分化関連の転写因子の発現や機能を抑制することがALL発症の原因となっているという推測のもと、CEBPが抑制する標的転写因子を探索した。CEBPαをドキシサイクリン誘導性に発現するLCL細胞(CEBPα/LCL)を作製し、そのmRNAに対しRNA-seqを行い、CEBPα発現に伴う発現変動遺伝子を抽出し、Gene set enrichment analysis (GSEA)を行なった。その結果、CEBPα発現により、転写活性化能が抑制される転写因子の候補としてMEF2 family(MEF2)を同定した。実際に、定量PCRによる検討で、CEBPα/LCLではMEF2の転写標的遺伝子の発現が低下していた。また、ルシフェラーゼアッセイによる検討では、CEBPαはMEF2の転写活性を強く抑制した。さらに、ChIP-qPCRによる検討で、CEBPαがLCL細胞内でMEF2転写標的遺伝子の近傍に結合しており、その周辺でヒストンアセチル化が低下して転写抑制状態にあることを確認した。 CEBPαにはp42とp30の2つのアイソフォームがあり、p42が顆粒球分化促進に働き、p30はp42の機能を阻害するように働くことが知られている。リンパ球に発現したCEBPαがMEF2の機能を抑制する現象に関してp42とp30の違いを検討したが、MEF2転写標的遺伝子への結合、その発現の抑制に関してp42とp30の間に大きな相違は認められなかった。 これらの研究成果を学会発表するとともに、Cancer Science誌に英文論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究予定の2つの遺伝子異常のうち、今年度はCEBP-IGHを中心に研究を進めたが、予定以上に進捗が早く、既に研究成果をまとめ論文発表を終えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、ZNF384融合遺伝子による白血病発症機序解明を中心に解析を進める。ZNF384融合蛋白をドキシサイクリン誘導性に発現するLCL細胞の作製、そのmRNAを用いたRNA-seqは終了しており、ZNF384融合蛋白が発現制御する遺伝子の候補(候補遺伝子)が選別されている。その候補遺伝子近傍へのZNF384融合蛋白の結合をクロマチン免疫沈降で確認する。またZNF384融合蛋白発現に伴うLCL細胞の形質の変化を詳細に検討する。候補遺伝子がLCL細胞の形質変化や、ZNF384融合遺伝子陽性ALL細胞株であるJIH5の増殖、B細胞分化状態に与える影響を、候補遺伝子をShRNAでノックダウンすることにより検討する。
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