研究課題
ゲノム型の異なる肺MAC症患者由来Mycobacterium intracellulare臨床菌株のトランスポゾンシーケンシング(transposn sequencing; TnSeq)を行った。その結果、臨床菌株に共通の生存必須遺伝子を131遺伝子同定した。臨床菌株共通の生存必須遺伝子として、既存の治療薬の標的遺伝子rpoC(リファンプシンの標的遺伝子)、embB(エタンブトールの標的遺伝子)、gyrA-gyrBおよびtopA(ニューキノロンの標的遺伝子)が挙がってきた。加えて、 新規抗結核薬の標的遺伝子atpA-atpG-atpD(ベダキリンの標的遺伝子)、glcB(リンゴ酸合成酵素)や、type VII分泌装置を構成する遺伝子群(eccC, eccB, eccB)、細胞壁グルカン合成(glgE)、ペプチドグリカン合成(pbpB)、アミノ酸合成(gltB)といった未開発の薬剤標的遺伝子が臨床菌株共通の生存必須遺伝子として挙がってきた。また、臨床菌株とATCC標準株との間で遺伝子必須性を比較したところ、臨床菌株において、糖新生系遺伝子および7型分泌装置遺伝子群の遺伝子必須性が増加し、輸送系遺伝子や二成分制御系遺伝子、解糖系の遺伝子必須性が減少していることが分かった。CRISPR干渉系を用いて、糖新生系遺伝子、7型分泌装置遺伝子、鉄硫黄クラスター遺伝子に対する遺伝子発現抑制株を作製し、菌の増殖試験を行ったところ、臨床菌株において増殖抑制効果がみられた。臨床菌株共通の生存必須遺伝子、および遺伝子必須性の高まっている遺伝子群は、臨床菌株に有効な薬剤標的となることから、肺MAC症治療法向上に貢献できる。
2: おおむね順調に進展している
肺MAC症患者由来M. intracellulare臨床菌株に対してトランスポゾン変異ライブラリーを作製し、予定通り生存必須遺伝子を同定できている。
今年度は、臨床菌株に共通なバイオフィルム形成必須遺伝子の同定とマウス生体内での生存必須遺伝子の同定を計画している。
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