研究課題/領域番号 |
22H03124
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
今井 淳太 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80431500)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 膵β細胞 / インスリン / 迷走神経 |
研究実績の概要 |
インスリン抵抗性は肥満などによって起こる全身でインスリンが効きにくくなる状態のことをさし、糖尿病の原因の一つである。しかし肥満の初期にはすぐに糖尿病になることはなく、インスリンを産生する膵β細胞が増え、多くのインスリンを作ることによって血糖値の上昇を抑える。しかしこの際、膵β細胞がどのようにして全身のインスリン抵抗性状態を知り、増え始めるのかはよくわかっていなかった。これに対して我々は、肝臓から脳を介して膵β細胞に伝わる神経のつながりが膵β細胞増加を促すことにおいて重要であることを明らかにした。本研究ではこの神経のつながりにおける未解明のより詳しい仕組みを明らかにする。具体的には本神経ネットワークにおいて①肝は何を感知するのか(肥満時に肝臓ERK経路活性化が起こるメカニズム)②肝はどういうメカニズムで内臓神経求 心路を刺激するのか(肝臓ERK経路活性化が内臓神経求心路刺激につながるメカニズム)③神経シグナルはどういうメカニズムで膵β細胞の増殖機転を作動させるのか(複数の迷走神経因子が協調して膵β細胞FoxM1経路を活性化する細胞内メカニズム)を明らかにする。①の検討について、炎症性腸疾患モデルにおいて、腸管炎症を特異的に阻害することが知られている抗体を用い、高脂肪食負荷時の腸管炎症を抑制した場合の神経ネットワークの変化を解析し、肝臓ERK 経路を活性化する上流のメカニズムを明らかにすることを目的とした実験を行い、腸管炎症の抑制により神経ネットワークが阻害されβ細胞増加が抑制される結果を得た。また、③の検討について、迷走神経因子による膵β細胞FoxM1経路活性化につながる上流の転写因子を明らかにし、その転写因子について、β細胞特異的ノックアウトマウスを樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症性腸疾患モデルにおいて、腸管炎症を特異的に阻害することが知られている抗体を用い、高脂肪食負荷時の腸管炎症を抑制した場合の神経ネットワークの変化を解析し、肝臓ERK 経路を活性化する上流のメカニズムを明らかにすることを目的とした実験を行い、腸管炎症の抑制により神経ネットワークが阻害され、膵β細胞増殖が抑制される結果を得た。これについては追加解析を経て論文投稿準備中である。また、迷走神経因子による膵β細胞FoxM1経路活性化につながる上流の転写因子を明らかにし、その転写因子について、β細胞特異的ノックアウトマウスを樹立した。すでにそのノックアウトマウスを用いた解析を開始している。これらのことから計画はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
FoxM1上流の転写因子のβ細胞特異的ノックアウトマウスに高脂肪食を負荷した際の膵β細胞増殖や糖代謝の解析を行う。 また、肝臓ERK経路活性化が内臓神経求心路を刺激するメカニズムの解明に向け、肝臓ERK経路を活性化する遺伝子導入や高脂肪食による肥満誘導などによって神経ネットワークが刺激されているマウスから脊髄後根神経節を採取し、single cell RNA-Seqを行う。c-fos発現などをマーカーとして、活性化した脊髄後根神経節細胞における遺伝子発現をin silicoで解析し、特異的に発現している受容体や活性化している細胞内経路を探索することで内臓神経活性化が起こるメカニズムを解明する。
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