研究実績の概要 |
①ケトン体が寿命に及ぼす影響:全身のケトン体合成律速酵素Hmgcs2の欠損 (Hmgcs2-KO)、ケトン体前駆物質1,3-ブタンジオール(1,3-BD)の経口投与、低炭水化物ケトジェニック食(LCKD)がマウス生存率に及ぼす影響を検討した。Hmgcs2-KOは、青年期と中年期のマウス死亡率に影響を与えず、老年期の死亡率を上昇させた。Hmgcs2-KOマウスの血中ケトン体濃度は生涯低値であり、その寿命短縮は青年期からの1,3-BD投与によりキャンセルされた。さらに、青年期からの1,3-BD投与、LCKDが野生型マウスでも寿命延長をもたらすかを検証した結果、LCKD群マウスは、中年期以降に体重と血糖値の急激な減少を伴い、老齢期に高い死亡率を示した。一方、高齢野生型マウスや動脈硬化モデルマウスに1,3-BD食、LCKDを投与した結果、1,3-BD食は高齢マウスの生存率を上昇させる一方で、LCKDは有意に死亡率を上昇させた。これらの結果より、内因性ケトン体産生は、哺乳類の長期生存に重要な役割を果たすこと、ケトン体補充は健康寿命に影響を及ぼすが、その投与方法や健康状態より諸刃の剣として作用することが明らかとなった。 ②ケトン体とmTORC1シグナルの解析を行うため、各臓器(腎臓、肝臓、膵臓、筋肉)特異的TSC1欠損マウスを作製し、各臓器でmTORC1シグナルが活性化するマウスを作製した。これらのマウスにケトン体投与を行ったところ、腎臓においてのみmTORC1の活性が抑制され、mTORC1過剰に伴う表現系の改善が見られた。この臓器におけるscRNAseqより新たなケトン体ーmTORC1シグナル調整機構が解明された。
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