研究課題
1.肝臓における代謝の領域局在性の制御に関わる候補因子に着目し、この候補因子のアデノウイルス(過剰発現ウイルスとRNAiウイルス)を用いて、各種モデルマウスの肝臓に遺伝子導入し、この候補因子を制御したモデルマウスを作製した。このモデルを用いて糖・脂質・エネルギー代謝に関わる各種解析を行うことで、特に、全身の糖代謝と、脂肪組織や骨格筋に与える新規のネットワーク機構を発見した。引き続き、糖代謝・脂質代謝・エネルギー代謝の各方面から、これらモデルマウスの表現型を比較検討することで、個体として各栄養素の代謝恒常性に及ぼす、肝臓由来の新たな調節機構の詳細を解明する。2. CRISPR/CAS9によるゲノム編集を用いた細胞実験系を樹立しており、同様にしてこの候補因子の遺伝子変異ヒト肝細胞株を作製・獲得を検討している。今後、この変異細胞株、ホモ変異細胞株、ヘテロ変異細胞株を獲得できた場合、野生型細胞株を対照群として網羅的解析へ進めることを検討する。3.この候補因子のターゲットExonの前後にLoxP配列を組み込んだfloxedマウスを獲得、このfloxedマウスと肝臓特異的Cre recombinase発現マウスとの交配を行い、臓器特異的ノックアウトマウスを作製した。タモキシフェン誘導性にCre recombinaseを発現するマウスであることから、タモキシフェンの必要量を繰り返し検討した。最終的なタモキシフェン必要量を決定し、この臓器特異的ノックアウトマウスの表現型を解析している。さらに、アデノウイルスによる過剰発現モデルとの比較検討を行うことで、生理的・病態生理的なメカニズムの解明に役立てる。4.発展的には、未知の臓器連携機構、特に神経系による制御機構介在の解明を目指して、神経系アプローチからの検討も加える予定である。
2: おおむね順調に進展している
2023度の研究実績と現在の進行状況、今年度への予定に関して、当該年度の研究計画書の内容を基に簡潔に記載した。1つに、肝臓における代謝の領域局在性の制御に関わる候補因子をターゲットとした研究では、モデル動物実験において、アデノウイルスによる過剰発現系で、新規のネットワーク機構を発見できた。また、タモキシフェン誘導性の肝臓特異的欠損モデルマウスを獲得でき、現在もその解析を継続している。
本年度も研究計画に基づき、研究は継続する予定である。まず、細胞実験として、別課題で取得のCRISPR/CAS9ゲノム編集技術を用いて、候補因子の遺伝子の目的配列を破壊した変異ヒト肝細胞株(ホモ変異細胞株あるいはヘテロ変異細胞株)を構築し、ヒト細胞での網羅的解析を検討したい。次に、動物実験として、肝臓への候補因子を導入したモデルマウス表現型の更なる解析と、神経系への介入を行い臓器連携の詳細の検討を行う。さらに、獲得できたタモキシフェン誘導性の肝臓特異的欠損マウスの表現型解析を継続する。以上のように、細胞実験系と動物実験系の解析を進めていき、肝臓における臓器内代謝を制御する候補因子の生理的意義と役割を解明したい。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (22件) (うち招待講演 1件)
Endocrine Journal
巻: - ページ: -
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