研究課題/領域番号 |
22H03136
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
島田 光生 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10216070)
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研究分担者 |
常山 幸一 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (10293341)
池本 哲也 徳島大学, 病院, 教授 (20398019)
安友 康二 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (30333511)
齋藤 裕 徳島大学, 病院, 講師 (50548675)
森根 裕二 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (60398021)
親泊 政一 徳島大学, 先端酵素学研究所, 教授 (90502534)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オルガノイド / 脂肪由来幹細胞 / 肝細胞様細胞 |
研究実績の概要 |
研究目的;肝細胞様細胞(HLC)は多能性幹細胞から分化誘導が可能であるが、すべての肝細胞機能を肝細胞と同等に保持するようなHLCはいまだに作製できていない。より肝細胞に近い、超高機能肝細胞様細胞 (Super HLC)の作成方法が必要である。本研究では、脂肪由来幹細胞ADSCを用いて誘導されたHLCを薬剤添加等で高機能HLCへと誘導しさらに、血管内皮細胞とのオルガノイドを形成することで、Super HLCを誘導する。また、ADSCからSuper HLCまでの過程において、「いつ、個人の細胞としての性格を獲得し表出するのか(免疫学的回避機構の性質を消失するのはいつか)」を評価したうえで代謝性肝疾患モデルへ移植しその効果を検討することを目的とする。 研究計画;1. ADSCにより誘導された高機能HLCと血管内皮細胞とのオルガノイドを形成 2. ADSCからSuper HLCまでの過程における免疫原性評価 3. 代謝性肝疾患モデルへの移植 研究成果;R4年度は、オルガノイド作成のプロトコールを確立し、血管内皮細胞とADSCの混合比率、血管内皮細胞混合のタイミング、オルガノイドとHLCの機能比較を行い、オルガノイドの機能向上(CYP3A4)を証明した。R5年度は、同実験の再現性を確認するとともに、スキャフォールドフリーの新たな浮遊培養装置を用いてのオルガノイド作成にも成功した。さらに、研究計画 2の免疫原生評価のため、ADSCからオルガノイド作成までの3段階において、HLA Class I・II、CD40、CD86、PD-L1、CD80発現をFACSにて評価した。ADSCの時点で、HLA Class I発現を認めたが、その他の表面マーカーは発現せず、また、分化誘導過程でも同傾向は変化を認めなかった。よって、オルガノイドの免疫原性は比較的低く、他家移植も選択枝となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3つの研究計画1. ADSCにより誘導された高機能HLCと血管内皮細胞とのオルガノイドを形成、2. ADSCからSuper HLCまでの過程における免疫原性評価、3. 代謝性肝疾患モデルへの移植、のうち、研究計画2まで完了しており、おおむね順調な経過と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroでのオルガノイドの機能評価、また、免疫原性評価が終了しており、最終段階での代謝性肝疾患モデルへの移植を実施予定である。 尿素サイクル異常症UCD患者は、難病指定された稀少疾患の1つであり、CPS1/OTC/Citrinなど、尿素サイクルに必要な酵素が先天的に欠損することで高アンモニア血症の病態を呈し、その本邦での患者頻度は、OTC欠損患者 8万人に1人(現在約500人)、ASS欠損患者 7万人に1人(現在約100名)、Citrin欠損患者53万人に1人(現在100名以下)、CPS1欠損患者80万人に1人(現在約100名)となっている。その治療は食事制限・薬物療法が中心となるが、重篤な場合、肝移植を必要とする。本邦でのドナー不足を考慮し、また、一酵欠損のみのため、臓器移植までせずとも、HLC移植が根治療法につながると考えている。昨年成育医療センターからのプレスリリースにおいては、5人のUCD患児にES細胞由来のHLCを経門脈的に移植し、肝移植までのBridging治療となったとの報告もなされた。我々の教室では、OTC欠損マウスあるいはCitrin欠損マウスを保有しており、同マウスADSCから作成したHLC機能はWild typeマウス由来のHLCと比較して機能不良であり、やはり他家移植が必要と考えている。免疫原生評価の結果から推測するに、このオルガノイドは比較的免疫原性が低く、免疫抑制剤フリーでの他家移植も期待される。疾患モデルマウスへの移植の前段階として、免疫抑制剤フリーの状態でヒトオルガノイドをWild typeマウスへ異種移植し、拒絶の有無も確認予定である(免疫原性のin vivoでの評価)。そのうえで、今年度は、同疾患モデルマウスへオルガノイド移植を実施し、アンモニア代謝がどの程度改善するのかを実証する予定である。
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