研究分担者 |
山縣 和也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (70324770)
澤 智裕 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (30284756)
三浦 恭子 熊本大学, 大学院先導機構, 准教授 (80583062)
馬場 祥史 熊本大学, 病院, 特任准教授 (20599708)
林 洋光 熊本大学, 病院, 講師 (80625773)
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、最長寿・がん化耐性齧歯類であるハダカデバネズミのmicrobiome(腸内細菌叢)とそれに伴うmetabolite(代謝物)の変化を解析し、消化器癌のがん化耐性に関わるmicrobiome、metaboliteを同定することである。ハダカデバネズミを飼育する研究室は世界でまだ10箇所程度であり、日本では分担研究者の三浦らが唯一であるが、飼育は順調に進んでおり、解析に適切な糞便の回収も問題なく行えている。 これまでに、メタボローム解析(ハダカデバネズミ 8 samples, SPFマウス 2 samples)及びメタゲノム解析(ハダカデバネズミ 19 samples, SPFマウス 4 samples)を施行している。食餌の影響が色濃く反映され、ハダカデバネズミ糞便から検出された代謝産物はSPFマウスと比較して多様かつ個体差が大きいことが明らかになった。熊大ハダカデバネズミvs.SPFマウス菌叢の比較では、ハダカデバネズミにおいて未知菌株が多く認められた。代謝産物および菌叢のPCA解析においてもハダカデバネズミとマウスの2グループにわけられ、それぞれの糞便に特徴があるという興味深い結果が得られている。今後、同定されたmicrobiome、metaboliteの機能に関してはin vitro及びin vivo(発がんマウスモデル)での検証を行い、創薬のための革新的なシーズ探索を目指す。また、実際のがん患者におけるそれらの発現動態・意義に関しては2,000例以上の消化器癌データベースで検証する予定である。これらをターゲットとして微生物を操作することにより、消化器癌を予防・治療できる可能性があり、非常に創発的かつ臨床応用可能な研究になると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ハダカデバネズミを飼育する研究室は世界でまだ10箇所程度であり、日本では分担研究者の三浦らが唯一であるが、ハダカデバネズミの飼育は順調に進んでおり、解析に適切な糞便の回収も問題なく行うことができている。 これまでに、ハダカデバネズミ 8 samples, SPFマウス 2 samplesを用いたメタボローム解析及びハダカデバネズミ 19 samples, SPFマウス 4 samplesを用いたメタゲノム解析を実施している。食餌の影響が色濃く反映されており、ハダカデバネズミ糞便から検出された代謝産物はSPFマウスと比較して多様かつ個体差が大きいという結果が得られている。また、ハダカデバネズミvs. SPFマウスの菌叢の比較では、ハダカデバネズミにおいて未知菌株が多く認められている。さらに、代謝産物および菌叢のPCA解析においてもハダカデバネズミとマウスの2グループにわけられ、それぞれの糞便に特徴があるという興味深い結果が得られている。このように、現在まではおおむね順調に研究計画は進行している。 また、消化器癌(特に食道癌)に関する腫瘍免疫、腸内細菌に関するデータベースの構築も行っており、特定の菌種(特にFusobacterium, Bifidobacterium)に関する解析も随時行っている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、ハダカデバネズミ及びSPFマウスの糞便を用いたメタゲノム解析、メタボローム解析を行っている。今後は、健常人の糞便を用いたメタゲノム解析、メタボローム解析も行い、それらを統合解析することにより、ハダカデバネズミで増減する“がん化耐性”関連腸内細菌、代謝物の同定を目指す。統合解析については、共同研究を行うBioinformaticianを交えた打ち合わせを適宜行っている。“がん化耐性”関連腸内細菌、代謝物を同定した後は、発がんマウスモデルへのそれらの移植実験を行う予定である。大腸癌の発がんマウスモデル[化学発がんモデル(AOM+DSS)、遺伝子改変マウス(Apc, Ras)]、胃癌の発がんマウスモデル(Ganマウス)に関しては、申請者らはこれまで使用経験があり、習熟している。 実際の消化器癌患者の腫瘍部及び非腫瘍部における候補腸内細菌、代謝物の発現動態に関して2000例の消化器癌データベースを用いて検証する。2,000例以上の消化器癌の様々な癌関連遺伝子変異等(KRAS, BRAF, PIK3CA, p53など)、エピジェネティック変化[LINE-1メチル化レベル(ゲノム全体のメチル化レベル]、腫瘍免疫データ [PD1, CD3, CD8, CD45, FOXP3、腫瘍関連マクロファージ(CD163, CD204)、癌細胞(PD-L1, IDO1, CD24)]がデータバンク化されており、それらとの統合解析を行うことにより、腸内細菌、代謝物が消化器癌の発生へ関与する分子学的メカニズムを解明することができる。
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