研究実績の概要 |
疾患動物モデルとして、重症感染症・虚血再環流を作成した。重症感染症モデルは、C57/BL6マウスに対する回盲部結紮穿孔 (23G針による2箇所の穿孔)で引き起こした腹腔内感染症による中等度敗血症モデルを作成した。このモデルでは、術後7日間の生存率90%以上で、術後2日後より飲水、摂食が可能となる。しかしこの間、肺組織中には好中球、単球が集簇し、術後回復期にあっても、肺は引き続き免疫的にはリモデリング期であり、肺の生体防御機能は術前とは明らかに異なっていることが示唆されている。さらに、肺組織のmRNA発現量は、CCL2, CXCL1, TNFalpha, IL-6いずれも、術後4日目にかけて経時的に有意に低下していた。術後4日目の肺を経気管的にリポポリサッカライドを投与することで刺激すると、健常マウスでは、通常激しい炎症を起こし、肺内の炎症性サイトカインの発現量が増加するが、このモデルでは、CCL2, CXCL1, IL-6はほぼ無反応で、免疫的な反応が抑制されていることが明らかになった。 虚血再灌流モデルは、同じくC57/BL6マウスを全身麻酔下で上腸管膜動脈の大動脈起始部を動脈瘤クリップで一定時間クランプして、その後開放するモデルを採用した。虚血時間を検討し、15分間のクランプ時間では術後早期の生存率は80%程度であり、このモデルで今後の評価を行った。術後3日目に、肺胞マクロファージを採取し、リポポリサッカライドで刺激したところ、TNFalpha, CCL2, CXCL1, IL-6, IL-10のmRNA発現量がコントロールマウス同様上昇し、むしろ強い反応も認められた 重症敗血症と、虚血再灌流モデルとでは、遠隔臓器に与える免疫学的シグナルが異なることが想定され、それが、二つの動物モデルでの肺の免疫的反応性の違いに影響していることが示唆された。
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