研究課題/領域番号 |
22H03168
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
川真田 樹人 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90315523)
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研究分担者 |
田中 聡 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60293510)
石田 高志 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 講師 (60531952)
石田 公美子 (松尾公美子) 信州大学, 学術研究院医学系(医学部附属病院), 助教 (80467191)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 術後痛モデル / 炎症組織 / 外科侵襲 / 神経新生 / 血管新生 / 後根神経節 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
SDラット(6-8週齢、雄)の右後肢足底皮下の踵から2cmの部位にComplete Freund’s Adjuvant (CFA)あるいは生理食塩水(NS) 50μlを注入した。28日後に右後肢足底皮下の踵から0.5cmの部位を起点として皮膚・筋膜を1cm切開し足底筋の一部を切開した。自発痛のスコアとしてguarding pain score(GPS)を記録し、痛覚過敏を評価するために熱および機械的刺激に対する逃避潜時(WL)と閾値(WT)を記録した。そして切開部皮膚における無髄神経(C線維)のマーカーとしてCGRP、有髄神経のマーカーとしてNF200、血管のマーカーとしてPECAM-1を用いて免疫染色を行なった。また、L4-L6の後根神経節において、CGRP、IB-4、NF200と、アポトーシスのマーカーであるATF-3で免疫染色を行なった。CFA-Incision群はNS-Incision群と比較して、足底切開後に強い自発痛が長く続き、足底切開後に強い機械性痛覚過敏が長く続いた。無髄神経(C線維)の指標であるCGRPの発現は、足底切開前と切開2-14日後においてNS-Incision群と比較してCFA-Incision群で有意に増加した。末梢組織において、有髄神経の指標であるNF200の発現は、足底切開前と切開後に両群間に有意差はなかった。末梢組織において、血管新生の指標であるPECAM-1の発現は、足底切開前と切開2-14日後にNS-Incision群と比較してCFA-Incision群で有意に増加した。 一方、CFAだけではATF-3を発現するDRGニューロンはなく、CSA-Incision群でのみ、かつCGRP発現DRGニューロンにおいてATF-3発現ニューロンが出現した。したがって、C線維のアポトーシスが術後痛の遷延に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症後に切開を加えた新規術後痛モデルでは、長期的な自発痛と痛覚過敏が起こった。そして病巣においては、C線維の神経新生と血管新生が見られ、β線維の神経新生はみられなかった。そして後根神経節においては、CFAによる炎症や生食投与後の切開だけではアポトーシスは起きず、CFAによる炎症後の切開した場合にのみ、ペプチド性C線維でのアポトーシスが観察された。従って、研究目的である新規術後痛モデル(炎症+切開)におけるC線維のアポトーシスが観察され、仮説の概略的な証明に至る結果が得られた。後はさらに詳細に仮説の証明を進めていけば、ゴールへと至ると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
現在まで得られているDRGニューロンのアポトーシスはCGRP陽性DRGニューロンであるが、仮説である触覚に応答するC線維(C-tactile)のアポトーシスは非ペプチド性とされている。この点をさらに詰めていくために、IB-4におけるアポトーシスが起こるか否か、更なる検討が必要である。一方、脊髄ニューロンにおける脱抑制を確認するために、脊髄後角ニューロンにおけるin vivo細胞外記録やpatch-clamp記録を行い、検証を行なっていく。
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