研究課題/領域番号 |
22H03178
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 湘南医療大学 |
研究代表者 |
塩田 清二 湘南医療大学, 薬学部医療薬学科, 教授 (80102375)
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研究分担者 |
石 龍徳 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (20175417)
土肥 謙二 昭和大学, 医学部, 教授 (20301509)
竹ノ谷 文子 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (30234412)
中町 智哉 富山大学, 学術研究部理学系, 講師 (30433840)
宮田 篤郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (60183969)
栗原 崇 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 准教授 (60282745)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | PACAP / CRMP2 / PC12 / 神経再生 / DNAマイクロアレイ / バイオインフォーマティクス |
研究実績の概要 |
PACAP(下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ポリペプチド) は主に神経組織で発現し、その受容体(PAC1-R)を介して神経細胞死抑制および神経再生・新生作用を持つと考えられている。本研究ではPACAPの脳・脊髄における虚血および外傷による神経細胞死抑制やタウオパチーの予防・治療法の開発を目的とし、各種関連遺伝子改変・欠損マウスを用いて学際的な研究を行う。我々は神経細胞と同じような生理機能を持っていると考えられているPC12細胞を用いてPACAP投与下の突起伸長のメカニズムを解析した。神経突起の伸長は、PAC1Rを介したCRMP2の脱リン酸化を介することが示唆され、PACAP添加後3時間以内にGSK-3β、CDK5、Rho/ROCKがCRMP2を脱リン酸化するが、PACAPによるCRMP2の脱リン酸化は不明であった。そこで、我々は、PACAP添加後5-120分の遺伝子およびタンパク質の発現プロファイルをオミックスベースでトランスクリプトーム解析およびプロテオーム解析し、PACAPによる神経突起伸長の初期因子を特定することを試みた。その結果、神経突起伸長に関与する重要な制御因子が多数発見された。"Initial Early Factors "と呼ばれる既知のものも含まれるが、例えば、 遺伝子Inhba、Fst、Nr4a1,2,3、FAT4、Axin2、タンパク質Mis12、Cdk13、Bcl91、CDC42、などのカテゴリーを含む。CRMP2の脱リン酸化にcAMPシグナルとPI3K-Aktシグナル経路、カルシウムシグナル経路が関わっている可能性がある。我々は、これまでの研究結果を参照しながら、これらの分子構成要素を潜在的なパスウェイにマッピングすることを試み、PACAPによる神経分化の分子メカニズムに関する重要な新情報を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、我々の研究によってPACAPの脳・脊髄における虚血および外傷による神経細胞死抑制作用を培養実験及び動物実験で明らかになった(PNAS, 2006, 2008など)。さらにPACAPがやタウオパチーの予防・治療法につがる研究成果を培養実験及び動物行動学的な解析で証明することができた(Science TM, 2021)。これまでの研究により、PAC1-Rが神経細胞死抑制作用に関与し、細胞内cAMP濃度上昇によるPKAの活性化が重要であるが、PKAの下流の分子機構及び遺伝子発現調節機構は不明であった。そこで我々はPC12細胞を用いてPACAP投与下の突起伸長のメカニズムを解析した。神経突起の伸長は、PAC1-Rを介したCRMP2の脱リン酸化を介することが示唆され、PACAP添加後3時間以内にGSK-3β、CDK5、Rho/ROCKがCRMP2を脱リン酸化するが、PACAPによるCRMP2の脱リン酸化は不明であった。そこで、我々は、PACAP添加後5-120分の遺伝子およびタンパク質の発現プロファイルをオミックスベースでトランスクリプトーム解析およびプロテオーム解析し、PACAPによる神経突起伸長の初期因子を特定することを試みた。その結果、"Initial Early Factors "と呼ばれる既知のものも含まれるが、 遺伝子Inhba、Fst、Nr4a1,2,3、FAT4、Axin2、タンパク質Mis12、Cdk13、Bcl91、CDC42、などのカテゴリーを含むことが分かった。これまでの研究結果を参照しながら、これらの分子構成要素を潜在的なパスウェイにマッピングすることを試み、PACAPによる神経分化の分子メカニズムに関する情報をさらに収集する必要性があり、さらに実験研究を促進していく必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
PACAPは主に神経組織で発現し、その受容体(PAC1-R)を介して神経細胞死抑制および神経再生・新生作用を持つと考えられている。本研究ではPACAPの脳・脊髄における虚血および外傷による神経細胞死抑制やタウオパチーの予防・治療法の開発を目的とし、各種関連遺伝子改変・欠損マウスを用いて学際的な研究を行う。今後の研究としては、研究代表者が独自に開発したPAC1-R KOマウスを用いて神経再生・新生の機構を分子神経科学的な手法を用いて遺伝子及びタンパクレベルで解明するための実験を行っていく。これまでの研究により、PAC1-Rが神経細胞死抑制作用に関与し、細胞内cAMP濃度上昇によるPKAの活性化が重要であり、PKAの下流の分子機構は不明であったが、かなり我々の昨年の研究で分かってきたので、さらにその分子調節機構を改名していきたい。またPACAPによる神経発生や神経細胞の分化過程における生理学的な意義を明らかにするためにPAC1-R KOマウスを用いて個体発生直後から細胞内シグナル伝達機構あるいは分子制御機構がどのように変化するのか、PACAPの生理学的な意義を明らかにするための個体発生学的実験を行っていく。さらに加齢による神経細胞死とPACAPの相関についてもPAC1-R KOマウスを用いた実験研究を行っていく。またマウスなどの小動物のみならずマーモセットなどの大型動物を用いたPACAPによる虚血性神経細胞死の防御機構の解析も行っていく。
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