研究課題/領域番号 |
22H03192
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
柿崎 育子 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (80302024)
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研究分担者 |
小林 孝安 東北大学, 動物・遺伝子実験支援センター, 准教授 (10221970)
山口 真範 和歌山大学, 教育学部, 教授 (20400129)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | コンドロイチン硫酸 / 神経 / 分化 / 糖鎖工学 |
研究実績の概要 |
本研究では,コンドロイチン硫酸のE構造によって神経細胞への分化がなぜ促進されるか,コンドロイチン硫酸鎖中にE構造がどのように配置することが分化促進に重要であるかを明らかにすることを目的としている。そのために,今年度は,以下の計画を実施した。 1)E構造による神経細胞への分化促進に関わる分子の探索:幹細胞の性質をもつマウス胚性腫瘍細胞株P19細胞に対し,all-trans-レチノイン酸で神経系細胞へと分化誘導した。この分化のモデル培養系にコンドロイチン硫酸Eを添加して,各タイムポイントで回収した細胞からRNAとタンパク質を抽出した。神経細胞のマーカーの発現変動をリアルタイムPCRで調べることにより,分化に及ぼすE構造の促進効果を確認したのち,同じRNA試料を用いてDNAマイクロアレイを実施した。分化の過程で変動する遺伝子をピックアップし,その発現量の経時的変化をプロットすることにより,コンドロイチン硫酸E添加の有無での変動のパターンを比較した。分化の過程で変動する遺伝子について膨大な情報が得られるとともに,コンドロイチン硫酸Eで発現変動パターンに影響を受ける遺伝子も多数見出された。 2)コンドロイチン硫酸のE構造をもつ解析ツールの作製:分化促進に必要なE構造のコンドロイチン硫酸鎖中での配置を調べるために,糖鎖長や立体構造が異なる解析ツールとしてのコンドロイチン硫酸誘導体を作製した。これまでの実験結果から,受容体との結合にはある程度の糖鎖長かプロテオグリカン様の構造が必要な可能性が推定された。今年度は,E構造を長い糖鎖の末端に導入する糖鎖工学的基盤技術の確立を目指す第一歩として,計画している反応の原材料としてのオリゴ糖を調製し,それに対する有機化学的な反応および酵素を用いた反応の条件検討を行った。一方で,反応生成物の分離法,構造の評価法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
DNAマイクロアレイの実施により,コンドロイチン硫酸E依存性に発現が変動する遺伝子を網羅的に探索し,多数の候補が見出された。一方,解析ツールとしてのコンドロイチン硫酸誘導体作製の反応条件を検討できた。従って,今年度の計画は達成できたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,DNAマイクロアレイで得られた結果をさらに解析し,コンドロイチン硫酸E依存性に発現が変動する遺伝子の中から,神経細胞への分化における細胞内シグナル伝達に関わる分子の候補をしぼり,分子により適切な分析法で機能の裏付けを行っていく。また,解析ツールとしてのコンドロイチン硫酸誘導体の作製,反応生成物の分離法と構造検定法の確立に向けた実験を継続していく。
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