研究課題/領域番号 |
22H03201
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 憲正 大阪大学, 国際医工情報センター, 招へい教授 (50273719)
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研究分担者 |
落谷 孝広 東京医科大学, 医学部, 特任教授 (60192530)
吉岡 祐亮 (吉岡祐亮) 東京医科大学, 医学部, 講師(特任) (60721503)
辻井 聡 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任講師(常勤) (70898014)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | セクレトーム / 間葉系幹細胞 / miRNA / バイオインフォマティクス解析 / 組織修復 |
研究実績の概要 |
間葉系間質細胞(Mesenchymal stromal cell:MSC)による組織治療効果は抗炎症作用、マトリックス形成、破壊などを制御するTrophic作用によるものとされるが、近年MSCが産生するエクソソームを主体とする細胞外小胞群であるセクレトーム(Secretome:SCR)の関与が報告されている。 MSC由来SCR(MSC-SCR)による組織治療の臨床応用に向けては、安全で効率良い調製法に加え、レギュラトリーサイエンスの観点から製品規格の確立、特にSCRの作用機序(Mode of Action:MOA)の同定が鍵となる。その候補としてSCRには遺伝子発現の制御に重要な役割持つとされるマイクロRNA(microRNA:miRNA)が豊富に含まれ、SCR治療メカニズムの鍵となる因子として注目を集めているが、組織治療におけるmiRNAを介した病態制御の系統的メカニズムの詳細は不明である。 そこで本研究では肩腱板断裂モデルラットを用いて、IFN-γでpre-conditioningされたMSC-SCRが骨ー腱修復に与える影響を検討する上で、本年度に以下の成果を得た。 IFN-γの刺激濃度を振り分け、各条件におけるMSCの生存率や特性を評価した。MSCの起源としては脂肪組織由来を用いた。細胞生存率はいずれの条件でも95%以上を維持でき、一般的なMSC陽性/陰性マーカーは刺激にかかわらず変動を認めなかった。 一方で、PDL-1やHLA-DRなどのタンパク質は、刺激濃度とともに発現陽性細胞率が増加した。細胞から分泌されるCD9またはCD63陽性SCR定量評価を行ったが、CD9陽性SCRは刺激により減少したが、CD63陽性SCRは低濃度刺激では減少するものの、濃度依存的に増加する結果となった。また、IFN-γ刺激によりSCR中のIDO1タンパク質発現が上昇することも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を進めていくにあたって、細胞培養中のプレコンディショニング刺激条件を選定することが非常に重要となる。今年度に遂行した実験により、今後の実験を行う上で基盤となる培養条件を選定することができたため、今後は一貫する実験データの収集が可能となり、最終目標に向けて着実に進展していると考える。今後は、通常培養で得られるNormal-MSC-SCR(N-MSC-SCR)と選定した刺激条件下で得られるPre-conditioning-MSC-SCR(P-MSC-SCR)を大量に回収し、内包するmiRNAの発現比較解析によって重要因子を選定したり、動物実験やin virto実験での効果検証を遂行したりする予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究予定として, MSC-SCRの変性疾患におけるターゲット細胞を培養し、MSC-SCR添加後の細胞内遺伝子発現プロファイルを網羅的にRNA-seqを用いて同定するにあたり、ラット腱板断裂モデルを用いたMSC-SCR投与実験を行う予定である。 3ヶ月齢のオスSprague-Dawley(SD)ラットの棘上筋の遠位部を切離し、腱板を断裂させ、4週後に縫合糸を用いて棘上筋腱を上腕骨付着部に縫着し修復する。再建後より1週毎にN-MSC-SCRを関節内投与し、術後早期である再建後2週、4週時に組織学的解析、および免疫組織化学染色や蛍光免疫染色を行い、修復組織の経時的な変化が十分確認できるか検討を行う。 さらに、上記で得られた結果をもとに、同様の手法にて、N-MSC-SCRまたはINF-γでPre-conditioningされたP-MSC-SCRを投与し、修復組織の質を組織学的解析または免疫組織化学染色にて比較し、P-MSC-SCRの有効性を明らかとする予定である。また、in vitro実験において、修復過程で関与する細胞への治療効果も評価する予定である。さらに,MSC-SCRの内包するmiRNAとターゲット細胞中の変動遺伝子を網羅的に解析し、病態制御に係わる遺伝子群やSCR中のmiRNA群のネットワークをBioinformatic解析により同定し、修復に関与する重要な因子の探索を進め、SCRのmiRNAを介した病態制御のMOAを解明していく予定である。
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