研究課題/領域番号 |
22H03202
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
尾崎 敏文 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (40294459)
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研究分担者 |
藤原 智洋 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (80639211)
近藤 宏也 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター(臨床研究センター), その他部局等, 医師 (40846911)
畑 利彰 岡山大学, 大学病院, 医員 (50880887)
吉田 晶 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 技術職員 (00910514)
杉原 進介 独立行政法人国立病院機構四国がんセンター(臨床研究センター), その他部局等, 部長 (60314671)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 肉腫 / サイトカイン / 腫瘍随伴マクロファージ / 粘液線維肉腫 / 未分化多型肉腫 |
研究実績の概要 |
骨軟部肉腫には有用な血中バイオマーカーに極めて乏しく、予後改善を妨げている。歴史的には、骨軟部肉腫の一部に特異的な融合遺伝子が発見されたことで組織診断の精度は向上したが、これまで血液を用いた非侵襲的な方法は開発されていなかった。本年度は、腫瘍分泌サイトカインの体液診断法への応用の可能性について検討を行った。本施設で手術治療を行った粘液線維肉腫(MFS)患者22名、未分化多形肉腫(UPS)患者20名における、治療前血清中サイトカインA濃度を健常人を対象に計測した。ヒトMFS細胞株(NMFH1)、ヒトUPS細胞株(NCC-UPS1-C1)からのサイトカインAの分泌を時間および細胞数依存的に解析した。また、MFS・UPS組織における腫瘍関連マクロファージ(TAM)の浸潤割合を解析した。UPS群、MFS群の血清中サイトカインA濃度は、それぞれ健常人に比べ有意に高値を示した(p<0.05)。MFS・UPS細胞株からのサイトカインA濃度は細胞数・培養時間依存的に上昇した。また、UPS群、MFS群におけるTAMは腫瘍組織において、それぞれ約20-30%の浸潤が確認された。以上の結果から、浸潤性軟部肉腫はサイトカインAを分泌し、血流にのって腫瘍微小環境にTAMを誘導している可能性が示唆された。TAMは悪性腫瘍での腫瘍微小環境において、血管新生や転移、抗アポトーシス効果などで腫瘍の増殖を加速させる因子となっている。血中サイトカインA測定により、TAM誘導の程度や腫瘍進展の可能性を予測し、TAMを標的とした治療選択に応用できる可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、肉腫における体液診断技術の開発を、循環核酸やエクソソームなどの細胞外小胞だけでなく、腫瘍分泌サイトカインを含めた検討を当初より計画していた。軟部肉腫において最も治療に難渋する粘液線維肉腫(MFS)、未分化多形肉腫(UPS)において、サイトカインAに着目した体液診断法が、実際に患者生体内でTAMを引き寄せ、予後にも相関する可能性を明らかにした。この臨床病理学的検討も当該年度の目標としており、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
血中で特定されるサイトカインが肉腫由来であることを確認するため、肉腫移植モデルを用いて腫瘍増大と共に血中動態がどのように変化するかを実験的に確認する。その上で、腫瘍切除等の治療により腫瘍量とどのように相関するかを解析することで、腫瘍モニタリングに有用であるかを評価する。また、さらなる症例を追加検討し、臨床病理学的検討を深める。他の循環分子にも解析に含め、各組織型における体液診断法の分子別の有用性についても検討していく。
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