研究課題
様々な運動器疾患 ・運動器関連病態(胸椎後縦靱帯骨化症 (OPLL: ossification of the posterior longitudinal ligament of the spine)、サルコペニア、変性性脊椎側弯症、SLE (systemic lupus erythematosus)関連大腿骨頭壊死、特発性大腿骨頭壊死症、股関節脱臼/臼蓋形成不全、強直性脊椎炎 、下肢伸展筋力など)の臨床データ、ゲノムデータを収集し、全ゲノム相関解析/GWAS (Genome-Wide Association Study)を行なった。これらのGWASにより得られた候補疾患関連遺伝子を、 in silico、in vitroのゲノム機能解析を併用したアプローチなどにより評価した結果、OPLLで、新たな疾患感受性遺伝子 CCDC91 (coiled-coil domain 91)を同定した。CCDC91の骨関節組織に特異的に発現する mRNA isoformが、骨形成のマスター転写遺伝子であるRUNX2 (Runt-related transcription factor 2)の制御を通じて、OPLLにおける異所性骨化の進行に関与することを発見した(Nakajima M, Terao C, Ikegawa S, et al. Am J Hum Genet 2023)。更に、上記の 各種運動器疾患のGWASのデータについて、LD (linkage disequilibrium) score regression法を始めとする遺伝相関(genetic correlation)など各種の遺伝統計学的解析を行い、運動器疾患間、運動器疾患と他の 疾患・形質との原因(遺伝性)の共通性を評価した。その結果、OPLLと2型糖尿病、胸椎OPLLとbody mass indexの間の正の遺伝的相関、および思春期特発性側湾症とbody mass indexの間の負の遺伝的相関を発見した。
2: おおむね順調に進展している
これまでに得られた研究成果をまとめて、計9報の英文原著論文(全て査読つき。American Journal of Human Genetics誌、Journal of Clinical Investigation誌など impact factorが10以上の雑誌を3報含む)として既に発表している。
国際共同研究により、運動器疾患GWASのデータの増加を図ると共に、これまでの研究で既に確保している、思春期特発性側弯症、変形性関節症、脊椎椎間板変性症など7つの運動器疾患、計3万人の臨床情報、疾患関連情報、GWAS データと、GWAS解析を進行中の運動器疾患 ・運動器関連病態(胸椎OPLL、サルコペニア、変性性脊椎側弯症、SLE関連大腿骨頭壊死、特発性大腿骨頭壊死症、股関節脱臼/臼蓋形成不全、強直性脊椎炎 、下肢筋力など)のデータと統合し、Multi-disease GWASを行う。 得られたデータについて、LD score regression法による遺伝相関などにより、運動器疾患間、ならびに運動器疾患と他の 疾患・形質との原因(遺伝性)の共通性を評価し、その病因・病態に挑む。更に、遺伝統計学的により得られた候補遺伝子を、先にOPLLで成功した in silico、in vitroのゲノム解析を併用したアプローチ 等により評価し、疾患感受性遺伝子を同定し、その機能、病因性を明らかにする。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Am J Hum Genet
巻: 110 ページ: 638-647
10.1016/j.ajhg.2023.03.004
Arthritis Res Ther
巻: 25 ページ: 103
10.1186/s13075-023-03082-y
Front Endocrinol (Lausanne)
巻: 14 ページ: 1089414
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巻: 12 ページ: e86514
10.7554/eLife.86514
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10.1172/JCI168783
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巻: 12 ページ: RP89762
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