研究課題/領域番号 |
22H03214
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
宮田 治彦 大阪大学, 微生物病研究所, 准教授 (50604732)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 精子 / 鞭毛 / 軸糸 |
研究実績の概要 |
2022年度は、TSNAXIP1の解析を行った。TSNAXIP1は、RNAの代謝に関与すると考えられるTSA-TSNAX複合体と相互作用するタンパク質として同定された。一方、精子の運動装置である軸糸の質量分析でTSNAXIP1が検出されており、TSNAXIP1は軸糸構成タンパク質として精子運動性を制御する可能性もあった。まずは抗体を用いてマウス精子におけるTSNAXIP1の局在を調べたところ、TSNAXIP1は精子鞭毛に局在していた。さらにウェスタンブロットを用いた解析により、TSNAXIP1はTriton X-100不溶/SDS可溶の軸糸タンパク質が含まれる画分に検出された。そこでTsnaxip1 KOマウスを作製したところ、Tsnaxip1 KO雄マウスの生殖能力は有意に低下した。続いて精子運動解析システム (CASA) を用いて精子運動性を調べたところ、前進運動性がTsnaxip1 KOマウスでは低下していた。また、ハイスピードカメラを用いて鞭毛運動を詳細に解析したところ、Tsnaxip1 KO精子では鞭毛が片側にしか屈曲しなかった。さらに体外受精を行ったところ、野生型のコントロールに比べてTsnaxip1 KO精子では受精率が低かった。一方、透明帯を除去した卵子を用いた体外受精では、受精率がコントロールと同程度に回復した。以上の結果から、TSNAXIP1は鞭毛運動の制御に関与しており、欠損すると鞭毛が片側にしか屈曲しなくなるために精子の前進運動性が低下し、透明帯を通過しづらくなると考えられる。TSNAXIP1は単細胞生物であるクラミドモナスでは保存されておらず、多細胞生物特有の軸糸タンパク質だと考えられる。TSNAXIP1が軸糸のどの構造体に局在しているのかは不明であり、今後解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Tsnaxip1 KOマウスを解析することにより、TSNAXIP1が鞭毛運動の制御や雄の生殖能力に重要であることを明らかにできた。さらにTSNAXIP1と同じくTSNAXIP_Nドメインをもつ1700010I14RIKの機能解析を行い、1700010I14RIKも鞭毛運動と雄の生殖能力に重要であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
近接依存性標識法を用いて、軸糸タンパク質に近接するタンパク質の同定を試みる。この解析によって、タンパク質がどの軸糸構造体に局在するのかを明らかにできるだけでなく、新たな軸糸タンパク質も同定できる可能性がある。また、TSNAXIP1以外の軸糸タンパク質についてもKOマウスを作製し、機能解析を行う。
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