研究実績の概要 |
本年度は胎盤細胞の分化におけるAutophagy(AtP)およびTFEBの影響を最初に検討した.胎盤機能の根幹となるシンシチウム化においてAtP活性が低下することを明らかとした(The Autophagy-Lysosomal Machinery Enhances Cytotrophoblast-Syncytiotrophoblast Fusion Process. Furuta A. et al. Reprod Med. 2022).その中で,TFEB発現は分化と共に低下すること,Lysosomeを特異的に障害する薬剤も分化抑制に働くことから、Lysosome抑制剤(AtP抑制剤)であるバフィロマイシン(BAF)は胎盤分化を負に制御することが明らかとなった. さらに,SLEやRA合併妊婦ではAtP抑制剤であるクロロキン(CQ)を症状軽減に使用するが,妊娠高血圧症候群の発症増加はRAでは認めない.そこで,上述のBAFとCQによるAtP抑制能と酸化ストレスとの関係を検討した.その結果,BAFはAtP抑制と共にNBR1発現を低下させ,抗酸化ストレス酵素の増加を抑制するが,CQはNBR1発現には影響しないため抗酸化ストレス作用が維持された(Chloroquine is a safe autophagy inhibitor for sustaining the expression of antioxidant enzymes in trophoblasts. Furuta A, et al.J Reprod Immunol. 2023).更に,胎盤に対するAtP抑制能もBAFに比しマイルドであり,CQはBAFに比しLysosome自体の機能への影響も少なく妊娠中の使用がより安全であることが分かった.以上より,本年度はTFEBにより制御されるLysosomeが、胎盤形成中・形成後の絨毛細胞機能に重要であることを明らかとした.
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