研究課題
本年は、先進医療であるTIL療法が中断となり、新規患者検体が入手できなかったため、既存の患者検体を用いて、全ゲノムシークエンスを実施するとともに、TIL製剤の培養法の改良を行った。全ゲノムシークエンスの結果、62遺伝子で腫瘍特異的な範囲が検出された。この中には1個のframeshift変異と2個のstop gain変異が含まれていた。TIL培養法の検討では、これまで、TILの急速拡大培養に用いる末梢血単核球は採取後6カ月以内としていたが、採取後18か月から24カ月のPBMCを用いても、TILの増殖および、INF-rの産生に影響がなく、製品概要書を満たした品質のTIL製剤が製造できることが示された。さらに近年、TILを活性化できるようなcompoundの開発がTIL療法改善のテーマとして重要とされている。本研究でTILを活性化するcompoundの同定を試みた。まず腫瘍細胞株のB16とOVA peptideを用いて、OT-1マウス由来のT細胞の反応性を見た次にマウスPD-1抗体、glycogen synthase kinase (GSK)-3β阻害薬のTWS-119、ACAT1/2阻害薬のrubimaillin、酸化ストレス産生を防止する急性虚血性脳梗塞治療薬のedaravone、そしてグルコシルセラミド合成酵素阻害薬のDL-PPMPの5つのcompoundを用いてTILを培養した。その後、compoundのTIL活性化への影響をELISA法によるIFN-γ放出量の解析やmitochondria activityにより評価した。結果、TWS-119がTILの活性化に有用であるとの知見を得た。
3: やや遅れている
本研究は、先進医療であるTIL療法を行った患者検体を用いて、免疫応答を解析するものであるが、TIL製剤の製造を受託していた株式会社テラが破産し、TIL療法の中断を余儀なくされ、新規検体を入手できなかったため。
既に2024年4月に、TIL療法を再開した。今後は新たな患者検体の解析を当初の実験系か買うに基づき行うとともに、より品質の高いTIL培養法の検討を行う。
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癌と化学療法
巻: 51 ページ: 134-137