研究課題/領域番号 |
22H03230
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
塚本 智史 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命・医学部門, 研究統括 (80510693)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 受精卵 / 脂肪滴 / フラグメンテーション / マウス |
研究実績の概要 |
本研究は、受精後の細胞質断片化(フラグメンテーション)と細胞内に蓄積される脂肪滴の関係性を多角的な視点で明らかにすることを目的としている。本研究に先駆けて開発したマウスの卵子から非侵襲的に脂肪滴だけを単離する独自技術を用いて、昨年度までに卵子から単離した脂肪滴に含有された脂質種の同定に成功している。本年度は、リン脂質の中でもフォスファチジルコリンの合成とフラグメンテーションの関係性を調べるために、その律速酵素であるCTP:ホスホコリンシチジリルトランスフェラーゼをコードするPcyt1a遺伝子を破壊したマウスの卵子や受精卵を用いた研究を実施した。その結果、我々が作製したPcyt1a欠損マウスから採取した受精卵は、既報の結果とは異なり、受精から着床するまでの胚発生自体は正常であることが明らかとなった。その後の解析から、Pcyt1aの欠損は着床後の致死となることが分かった。現在この相違点に着目して研究を行っているが、受精卵の培養環境(培地に含まれる脂質成分や栄養素など)によって、Pcyt1aの本来の表現型がマスクされている可能性が高いことを示す結果が得られている。言い換えれば、受精卵の発生過程におけるフォスファチジルコリン欠損は外的因子でレスキューされることを示唆している。このレスキュー要因が明らかになれば、受精卵のフラグメンテーションに関わる分子機構の理解が進むと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した研究自体は予定通り遂行している。その過程で予想外の結果が得られたため、当初予定していなかった研究も併せて遂行している状況である。以上の理由から、概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(最終年度)に向けて、今年度得られた予想外の知見に焦点を当てた研究を展開することは非常に重要な位置付けとなる。一方で、その要因の解明には時間を要する懸念もあることから、代替モデルの作製も検討中である。本研究を開始して以降に中国を中心とした研究グループから、哺乳動物の受精卵の胚発生過程では脂質種が劇的に変化することが報告された。我々が昨年度までに同定した脂質種も含まれていることから、今後はより分子メカニズムに踏み込んだ解析が必要になると予想されるため、上述した予想外の発見をヒントに解析を進めたい。
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