研究課題/領域番号 |
22H03233
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
清水 猛史 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (00206202)
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研究分担者 |
松本 晃治 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (40750138)
清水 志乃 滋賀医科大学, 医学部, 客員講師 (50505592)
中村 圭吾 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50848380)
川北 憲人 滋賀医科大学, 医学部, 医員 (50915121)
新井 宏幸 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (60816627)
湯田 厚司 滋賀医科大学, 医学部, 客員教授 (80293778)
戸嶋 一郎 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80567347)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 舌下免疫療法 / スギ花粉症 / 制御性T細胞 / IL-10 / IL-35 / メモリーT細胞 / 抗原親和性 / 抗原特異的IgE抗体 |
研究実績の概要 |
本研究では、スギ花粉とダニ舌下免疫療法の治療前と治療後1, 2, 3年の患者血液を利用して、その有効例・無効例における、抗原特異的免疫グロブリンとその抗原親和性の変化、血清中のサイトカインの変化、さらに末梢血単核球の各種の抗原に対する反応性の変化について検討するとともに、抗原提示細胞やTh1,Th2,Th17細胞、濾胞性T細胞、メモリーT細胞、B細胞、制御性T細胞、制御性B細胞などの機能や変化を明らかにした。 その結果、①スギ花粉舌下免疫療法のヒノキ花粉症に対する免疫学的作用として、1年後には非特異的に末梢血単核球からのIL-5, IL-17産生が抑制されること、一方でCry j 1抗原特異的にIL-10産生が増加すること、抗原特異的なIgE抗体,IgA抗体,IgG1抗体,IgG4抗体が産生されるが、ヒノキ花粉との交差反応性が認められること、抗原刺激による末梢血単核球からのIL-5産生の減少とIL-10産生の増加、さらに特異的IgG4抗体の上昇が臨床症状の改善と相関することなどを明らかにした。 また、②スギ花粉舌下免疫療法1年後には抑制系サイトカインである血清中のIL-35値が上昇し、IL-35を発現する制御性T・B細胞が増加すること、血清IL-35値が臨床症状の改善と相関すること、③舌下免疫療法の有効例と無効例に分けてメモリーCD4陽性T細胞を分離し、RNAシークエンスによる網羅的解析を行ったところ、有効例でアポトーシス抑制遺伝子DPF2の発現が低下し、舌下免疫療法後には制御性B細胞が誘導されて、メモリーT細胞のアポトーシスを促進すること、④抗原特異的IgE抗体の抗原親和性を測定し、スギ花粉やダニの舌下免疫療法後には特異的IgE抗体が一時的に増加するが、抗原親和性が低下した抗体が産生されるために、マスト細胞からの脱顆粒が抑制されること、などを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、以下の多くの研究成果を得ている。 (1)スギ花粉舌下免疫療法のヒノキ花粉症に対する免疫学的作用を検討し、抗原特異的抗体産生には抗原の交差反応性が関わること、非特異的なPBMCからのサイトカイン抑制産生抑制作用が得られるが、IL-10産生は抗原特異的に生じることなどを明らかにした。 (2)舌下免疫療法1年後には、アレルギー炎症に関わるTh2細胞,Tfh2細胞が減少し、制御性細胞群(制御性T細胞,Tfr細胞,Tr1細胞)が増加し、抗原刺激によるPBMCからのIL-5産生が低下し、IL-10産生が増加した(Murao T, Int Forum Allergy Rhinol 2023)。 (3)スギ花粉舌下免疫療法の作用機序として、制御性T細胞、制御性B細胞から産生される制御系サイトカインIL-35の重要性を明らかにし、舌下免疫療法後には抗原刺激によって、スギ花粉飛散期に血清IL-35値が上昇し、臨床症状の改善に寄与することを明らかにした。 (4)スギ花粉舌下免疫療法の有効例と無効例に分けてメモリーCD4陽性T細胞を分離し、RNAシークエンスによる網羅的解析を行ったところ、有効例でアポトーシス抑制遺伝子DPF2の発現が低下し、舌下免疫療法後にはFas ligandを発現する制御性B細胞が誘導されて、メモリーT細胞に発現するFasに作用して、メモリーT細胞のアポトーシスが誘導されていた。(Arai H, Clin Exp Allergy 2022)。 (5)舌下免疫療法1年後には、抗原特異的IgE抗体が一過性に増加するが、臨床症状は改善する。特異的IgE抗体の抗原親和性を測定したところ、1年後には抗原親和性が低下した抗体が産生されるために、マスト細胞からの脱顆粒が抑制されて臨床症状が改善することを明らかにした(Nakamura K, Allergy 2023)。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、①スギ花粉舌下免疫療法のヒノキ花粉症に対する免疫学的作用、②舌下免疫療法後の末梢血単核球サブセットの変化、③スギ花粉舌下免疫療法1年後の制御系サイトカインIL-35の変化と臨床効果、④メモリーCD4陽性T細胞の機能変化、⑤抗原特異的IgE抗体の抗原親和性の変化などについて明らかにしてきた。本年度は、上記の研究テーマをさらに追及して、①交差反応性のメカニズム、➁ダニ舌下免疫療法後の抗原特異的IgE抗体の抗原親和性の変化と、抗原親和性変化のメカニズムなどについて検討を深めるとともに、以下の研究テーマについてさらに検討を深める。 (1)舌下免疫療法の臨床効果を判断できるバイオマーカー発見。舌下免疫療法は10-20%の割合でで臨床効果が乏しい症例がある。治療開始時に臨床効果を判定できるバイオマーカーが求められ、多くの研究が行われてきたが、有効なバイオマーカーは見つかっていない。おそらく治療開始前に判断できるバイオマーカーは見つからない可能性が高い。そこで、視点を変えて治療開始後早期に判断できるバイオマーカーの検討を行い、早期に臨床効果を判断して、舌下免疫療法の適応を判断できる体制の構築につなげたい。 (2)舌下免疫療法の自然免疫への作用。これまではすべて適応(獲得)免疫に対する作用ばかり検討されてきた。近年、アレルギー領域においても自然リンパ球などの自然免疫の重要性が明らかになっている。そこで1型、2型、3型自然リンパ球やNK細胞など、自然免疫にかかわる細胞動態の変化について検討する。 (3)抗原特異的IgE抗体の役割について検討する。舌下免疫療法後には、抗原特異的IgG4抗体が増加するが、その作用機序についてはよくわかっていない。抗原に対する阻止抗体として作用している可能性があるが、一方で炎症を消炎させる抗体としての役割が注目されている。
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